怒りの鉄球 ページ12
静寂に包まれたある日の夜。
もう3月というのに雪が降り積もっていた。
愛媛支部のアサシン、ロイ・マーフィーは一本の電話を受け取る。
訃報だ。
愛媛支部長が奇襲を受け殺されたという。
「どうしますか、ロイさん！！」
「……」
「支部長をやったのは誰です？！」
「…おそらくだけど。支部長の体は被弾していたからアレクシス・バルサだ。支部長ほどの方をやれるのは彼ぐらいだろう」
「…バルサ…！！」
その名を聞きロイの部下達は皆顔面蒼白だ。
誰が倒せるというんだ、何て事を小声で呟く奴もいる。
「俺が行くしかないね」
「しかし、幹部の方の許可を…」
「許可は取れるさ。急がないといけない、まだ日本にいるはずだから」
ロイは転移魔法の詠唱を呟くと、止めに入る部下達を振り払いバルサを探しに思い当たる場所へと転移した。
転移した場所は、愛媛県内の田舎町。
バルサの気配を感じたのだ。
(夜更けにこんな場所に何か用事が…？)
彼の思考は全くもって読めない。
ロイは常に魔力を手に溜めながら夜道を歩いた。
が、思わず拍子抜けになりそうな場面に遭遇する。
探していたバルサ本人は呑気にベンチに座りながら星を眺めている。
「何をしているんだい、バルサ君」
「よーオ、ロイ！早かったなア。流石だぜ」
「…そりゃどうも。単刀直入に言うと、下手人は君か？」
「そう思ったからここに来たんじゃあねえのか？」
「…」
「いやア、田舎は星が綺麗だよなア…いつまでも眺められる」
バルサの側にある簡易なテーブルにはワインとフランスパンが置いてある。
ワインを手に取り悠長に飲み始めた。
ロイは目にも留まらぬ速さでバルサへと間合いを詰め氷で覆われた拳で殴りかかった。
しかし、バルサは鮮やかに避けロイの足首へと弾を放つ。
命中した足首からは血が吹き出て、ロイは倒れ込んだ。
「らしくねえなア〜。近距離戦ならお前の弟の方が余程強い。それに一見最強に見える魔法は欠点がある。それはなア…」
「あ、アイス………」
「詠唱だ。そいつア、時間を食う。ア デュー ロイ」
闇の中、二発銃声が鳴り響いた。
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作者名：塩味 | 作成日時：2019年1月27日 19時
