アンダルーサ ページ11
バルサはゆっくりと腰を上げ都姫へ手を差し出した。
「俺と一曲踊ってくれませんかね」
「ダンスの所作は全くもって無知です」
「俺の動きを真似したら良い。ほら、楽しもうぜ」
多少ながら強引だがバルサは都姫の手首を掴み引き寄せるとアンダルーサの曲に合わせ軽く踊り始めた。
都姫は多少狼狽えながらも動きを真似しステップを踏んだ。
途中彼の靴を踏みそうになりながらも懸命に食らいつく。
曲が終わると何か気持ちがスカッとした。
何故かは分からないが…スカッとしたことまた驚いた。
楽しかったのだ。
「…バルサさん、警備員があなたを探しています。あなたたちの部下もここにいてはバレてしまう」
「じゃあ誰にもバレねえとっておきの場所にでも連れて行ってくれるのか〜〜〜？」
「…抜け目ありませんね」
「そりゃあ俺のセリフさ」
ラジカセからまた新たにクラシックが流れ始める。
アンダルーサの激しさから一転、穏やかで静かな曲調であった。
「おお？！」
「どうかされましたか」
「ここの奴らにバレる以前によーォ、ちょいとやっかいなやつに居場所がバレたみたいで」
「…あなたは人殺しですか？」
「これでもプライド持って仕事してるんだぜ、ちゃーんと給料も貰ってよ。今日の依頼は、オメーの屋敷の主をぶっ殺すっていう依頼だった」
「…！」
「だが楽しかったし招かれざる客さんもいることだしずらかる」
「元々殺す気は無かったのでは？」
「アサシンの俺でも驚くほどの鋭さだぜお嬢さん。このままさらっていきたいのは山々だがァよ」
「…遊びに来たんですか？」
「おいおい、人が話してる途中で質問をぶっ込んでくるんじゃあねえ。まあそういうこったァな」
バルサは胸ポケットから紙切れ2枚を取り出しそれを都姫に握らせた。
都姫はそれをすぐに確認する。
最近公開され始めた映画のペアチケットであった。
「…バルサ様、屋敷の者に見つかりました…！！」
「げっ。…お嬢さんよオ、そいつはmon copainと楽しんで来な。ア デュー」
バルサはウインクをすると屋敷の塀を軽々と超え、足早に消えて行った。
「不思議な方でした」
都姫は彼が立ち去った場所を一点見つめ、アンダルーサを脳内でリピートした。
何をしに来たのか明確な目的は分からなかったがこれが最後の別れではない気がするのだ。
「さようなら変なお兄さん」
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作者名：塩味 | 作成日時：2019年1月27日 19時
