始まりの感情 ページ2
ロイと名乗った男に触れられた刃はますます電光を帯び、ミカ自身の体内も何か漲るものを感じた。
「雑魚は任せてくれ」
そっと離された手はミカの肩を優しく二度叩いた。
「そうだね。そろそろ僕の見せ場かな」
魔力がチャージされた鎖鎌の輝きを惚れ惚れと見つめミカはうっとりとした息を吐いた。
「綺麗。これが僕の殺意、潜在された魔力…。ねえ、恥をかかせたこと責任とってよね」
「何をぬかし……！！」
ボスが拳銃で撃つより速くミカは光の如く首を斬り飛ばした。
そしてボスの身体には電撃が走り、焦げたまま地面へと倒れ込んだ。
後ろを振り返ると返り血を浴びながらも爽やかに笑顔で手を振るロイがこちらへと向かって来ている。
「カイとそっくりだけど、中身は全然似てないね」
「カイに持っていないものを俺は持っているけど、俺に持っていないものをカイは持っている」
「助けてくれてありがとう。でも獲物を横取りすることだって出来たはずだけど」
「そうなんだけどあんまり興味とやる気がなくてね。それと、見たかったんだ」
「？」
「ドイツの天才麒麟児、ミハエル君の戦いっぷりを」
「途中の雷、あれは何？」
「君の魔法の潜在能力だよ。潜在能力があるからって使えるかどうかはまた別の話だけど」
ロイはミカの返り血をハンカチで丁寧に拭いながら見上げて笑みを浮かべた。
「…カイとやっぱり似ていない。カイはそんな風に笑わないし、こんなことしない」
「未来の弟のこともちゃんと大切にしないとカイに怒られそうだから」
「…？それってどういう…」
「さあね」
ロイが指をパチンと鳴らすと、気付けば屋敷から外に出ていた。転移魔法を使われたのであろう。
ミカは場数は多いし暗殺する際に他の組織と出くわすことも少なからずあったが異様な雰囲気を放つ彼に少し眉根を寄せた。
「苦手なんだよね。ロイみたいなタイプは」
何かこそばゆい感覚に陥るのだ。
「酷いなァ。…あ、俺はもうボスのところに報告行かないと。またね、カイによろしく」
待てと手を伸ばすもロイは一瞬で姿を消した。
「魔法ずるい」
ぷうっと頬を膨らまし彼が消えたところを見つめた。
視線を下に下ろすとペンダントが落ちているのに気付き、ミカはそれを拾うと中を開けた。
中にはカイの幼い頃の写真が入っていた。
ミカはそれを見ると頬を紅潮させる。
この気持ちに未だ無自覚だがこれが特別な感情だと気付くのはもう少し先の話である。
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作者名：塩味 | 作成日時：2019年1月27日 19時
