始まりの感情 ページ1
20XX年、世界は戦争、紛争、領土争奪により殆どの先進国がスラム化。都市と地方には暗殺を生業とする組織が多数存在していた。
政治家、大富豪、財閥など成功者の中には無論悪人が存在する。それらを暗殺のターゲットする組織、ただの殺し屋として業を成す組織、土地を欲し権力者を狙う組織などそれぞれだ。
ドイツ出身のミハエル・エアハルト、愛称ミカは依頼で遥々来日していた。
日本トウキョウの組織であるボスの暗殺を任されている。
無論、一筋縄では行かない相手ではあるがミカは元より自身の腕には自信がある方であった。
(さっさとやって、帰るしかないね)
愛用の鎖鎌をぎゅっと握り組織の屋敷へと侵入した。
警備をしているものたちはすでに尸であり、人形のように地に血を流しながらごろついている。
警備係の身体には鎌特有の傷がある。
暗闇の中軽快な足取りでボスがいるであろう私室を目指す。
途中何人か出くわしたが何かを発しこちらに攻撃する前に仕留めてしまった。
「あっ、ボス以外はなるべくころしちゃダメなんだっけ」
茶目っ気のあるくりくりとした丸い瞳を細め「やっちゃった」と軽やかに笑う。
その刹那。
突如ミカの身体を誰かが投げ縄で縛り付けた。
「あれ、油断したかな」
縄で引き寄せられ勢いよく地面に顔をぶつける。
派手に転んでしまった。
「詰めが甘いな、ミハエル」
異変を感じ駆けつけたボスとその側近達がミカを見下ろして満足気に笑う。
「手間が省けたよ。ドイツ所属のエース"ちゃん"の息の根をここで止められるのだからな」
すらり、と日本刀を抜くボスを見上げながらミカは口元に笑みを浮かべる。
「これはまずいね」
(ここまでかな)
死をも恐れない余裕の笑みは一変し、無意識に好意を寄せるカイの顔がふと脳裏を過ぎった。
アサシンあるまじき行為だ。
死を恐れてしまうなど。
死にたくない、そう願うも遅かった。
ボスは刀をミカの首めがけて振り下ろした。
「アイスシールド」
後ろから場違いな低く優しげな詠唱が聞こえたその時にはもうミカの前に氷の盾が張られていた。
それと同時に縛られた縄は凍りつき破壊された。
「…魔法？」
「人間臭いね。嫌いじゃないよ、その表情」
鎌へと白く大きな手が添えられる。
すると刃全体は雷光に包まれたのだ。
「初めまして。俺はロイ。君はミハエル君だね」
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作者名：塩味 | 作成日時：2019年1月27日 19時
