いつか、絶対に。【進撃の巨人】 (ページ28)

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私以外誰もいない湯に、肩まで浸かる。

　閑静とした浴場に、私が動いた時にだけ水音が響くのが、寂しさをもっと増した。

　手元のお湯を両手で掬い、今日のユレイナさんの言葉を思い浮かべる

　『何かを』

　「遺す…」

　私には、何を遺せるだろうか。

　目を瞑って思い浮かんだのは、同期の顔。
　
　今頃、何をしているのだろうか。

　アーツ、私がいない寂しさで死んじゃってないかな

　ふふ、と、小さく笑みが零れる。

　
　考えるのはやめた。きっと、考えても出てこない。考えるだけ、無駄な気がした。

　リヴァイが待っているかな。リヴァイは待たせると怒るから、早めに上がらなければ。

　
　立ち上がり、水音が鼓膜を揺らす。

　ひんやりとした空気が肌寒く、すこし急いで浴場を後にした。

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　「リヴァイ」

　消灯時間も迫り、しんと静まり返った廊下に、私の声と、ドアをノックする音だけが響く。

　「あぁ、はいれ」

　落ち着いたリヴァイの声が聞こえ、ゆっくりとドアを開けると、椅子に腰掛けたリヴァイがいた。

　「遅せぇ」

　眉間の皺を深くしながら紅茶を飲むリヴァイに、ごめんと一声かける。

　「外には誰もいなかったか」

　「うん。誰も」

　リヴァイは紅茶を飲み干してカップを置き、立ち上がる。

　
　「…上着は」

　「…？まだ、ない」

　「そうか。」

　そういうと、私に1枚のマントを投げてよこしたリヴァイ。緑色に自由の翼が刺繍されているそれを見て、思わずテンションが上がる。

　「わ…。本物だ」

　「それのパチモンがあっても仕方ねぇだろ。行くぞ」

　リヴァイもマントを羽織り、部屋をでる。

　慌ててついて行く。

　「どこ行くの？」

　「屋上だ」

　少し声を潜め、人差し指を唇に当てるリヴァイ。

　はっとして口を噤む。

　リヴァイの左手には、鍵が握られていた。

　もしかすると私は、今、悪いことをしようとしているのかもしれない。