漆ノ章ーそう思ってたよ、兄貴 ページ38
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兄貴は昔から、雨を降らせるために蟻を踏んで歩くような、無邪気な残酷さをもつ部類の人間だった。それでも蛙は踏まなかったし、弟である俺を踏みつけることもなかった───
───今までは。
きっと全てがおかしくなったのは、俺が小学校を卒業する年の、秋の終わり、まだ夏の気だるさと陽気さが残るあの日だ。
───
｢…以上が五条家からの依頼だ｣
脱ぎ散らかした衣服と空の酒缶が転がる、まるで豚小屋のような部屋で聞かされた父親の話は、いっそ冗談みたいに酷かった。
俺は本気で父親の正気を疑ったし、もしかしたら父は酒に酔っていたのかもしれないと思った。そうであって欲しかった。
書類には、【結果相応の額を当家から支払う/先方との新たな友好関係を築くため、当家にて協議を執り行い判断を下すことを約束する】としか書かれていなかった。
なんと曖昧な書かれ方か。結果相応とは判断が向こう任せすぎる。それに、下される判断はこちらにとって有利とは限らない。
父親は、そんなことにも気付かず、嬉々として依頼を受けてきてしまった。やっと元の生活に戻れる、ようやくチャンスが巡ってきた、とうわ言のように繰り返して。
父の話を聞いた日から、兄貴も自室にこもりがちになった。兄貴は兄貴で、作戦を考えないと、とそれしか言わなくなった。突然にのめり込んでしまった父親と兄貴がいつしか怖くなって、俺は外に遊びに行くことが増えた。
───
近所付き合いは悪かった。それは父親がよく怒鳴るからかもしれないし、母親がよくヒステリックをおこすからかもしれないし、はたまた家賃の取り立てが毎週のようにくるからかもしれなかった。
あそこの家族には近付かない方がいい。なんだか変な家。それがその集合住宅での我が家の評価で、世間から見た俺たちだった。
だから、地域の子供たちに混じって遊ぶなんて出来なくて、公園に足を向けるのは夕暮れ時になってからだった。
その日も、夕方の鐘を入場曲に、こっそりと公園に忍び込んだ。その公園には小川が流れていて、金魚が入ったバケツの水を変えるのにぴったりだった。その金魚は、父親のヘマが原因で追い出された前の家から持ってきた、数少ない私物のひとつで、その日までの唯一の友達だった。
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砂漠 - エレナさん» ありがとうございます！そう言って頂けるととても励みになります(●︎´▽︎`●︎)これからも楽しみに思っていただけるよう頑張るので、ぜひ最後までお付き合いください､､､(_ _*)) (2022年4月2日 11時) (
レス) id: c817577711 (このIDを非表示/違反報告)
エレナ(プロフ) - この作品大好きです！続きが楽しみです! (2022年3月26日 21時) (レス) @page16 id: 806542db6b (このIDを非表示/違反報告)
砂漠 - お餅さん» まーたやりました。今日何回目ですか、私！！1個下のコメントはお餅さんへの返信です､､､失礼しました､､､お餅さん、コメントありがとうございました✨ (2022年1月1日 15時) (レス) id: c817577711 (このIDを非表示/違反報告)
砂漠 - コメントありがとうございます！ご期待に添えるよう、更新も頑張っていきたいと思います٩(ˊᗜˋ*)و最後までお兄ちゃんを応援してあげてください(_ _*)) (2022年1月1日 15時) (レス) id: c817577711 (このIDを非表示/違反報告)
砂漠 - あいすくりぃむとちょこれぃとさん» いや、私もタイトルとの温度差は感じていたんですよね､､､ですが地獄を見たというお言葉に笑ってしまいました😆最高の褒め言葉ありがとうございます！お兄ちゃんには幸せになって欲しいですね､､､頑張ります🔥 (2022年1月1日 15時) (レス) id: c817577711 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：砂漠 | 作成日時：2021年12月11日 11時
