五条さん家のお兄ちゃん！ 続編【呪術廻戦】

62. ページ21

ちらりと腰元を覗う。小刻みに揺れるやわらかそうな白は、優しい雰囲気を漂わせて、その腰に回った腕は信じられないほどに固い。普通に痛い。


俺の視線に気づいてか、白から青が覗いた。


｢どうした？兄ちゃん｣


｢い、いえ…｣


俺は完全に距離をつかみ損ねていた。それまで通りに五条悟様と呼べば真顔でドヤされたし、五条様と呼べば絶対零度の目をされた。いや、あれはおよそ人間がする目ではなかった。天使等とは程遠い、それこそ閻魔大王のような──


｢兄ちゃん｣


｢は、はい｣


｢余計なこと考えてるだろ｣


ばれた。


｢いえ、そんなことは…｣


ふーん、と不機嫌気味に呟いた閻魔──もとい彼は、元々密着している頭を、さらにぐりぐりと押し付ける。痛い。


｢兄ちゃん、俺のことちゃんと名前で呼んで｣


｢いや、ですが…｣


｢あとその敬語。次やったらはたく｣


｢しかし…｣


言い淀む俺に、くぐもった声が告げる。


｢お前は俺の兄ちゃんだ。何を躊躇う必要がある？｣


｢お言葉ですが、五条悟様…｣


｢聞かない｣


｢ですが、｣


｢嫌だ｣


こんなに駄々をこねるところを見るのは初めてだった。


｢悟様｣


｢っ、お前だけは──！

…いや、何でもない。でも、ちゃんと呼んで。呼ぶまで聞かない｣


この時、彼が何を言いかけたのか、俺には分からなかった。

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