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「やあやあ、ナイスガイの僕だよ!」
雑音と人が行き交う駅内で、久しぶりのクラスメイトが片手をあげた。
「あぁ、お久しぶりです」
相変わらず堅いねー、お土産は?、お土産は?、ねえねえねえねえ、という声が混沌とした空気に吸い込まれていくのを聞きながら、今回の長旅を思い出してそっと息を吐いた。
五条家、恐るべし…
俺は完全に疲弊仕切っていた。今まで積み上げてきた日常が、ここ数日で派手に破壊された気分だ。いや、実際そうなのだろう…。
「最初は適当に誤魔化そうと思ってたのに…なんで受け入れてしまったんだ……いや、あんなの誰だって受け入れるだろ…」
「えー…なにぶつぶつ言ってんの?ホラー?ウケるんですけど…」
「俺のこれからの生活はどうなるんだ……向こう側もやけにすんなりだったし…前はあんなに厳しかったんだぞ?……怪しい…なんか企んでる?俺死ぬ?そうか、死ぬのか……仕方ないよな…」
「A!」
考えがどんどん悪い方にいっている俺を、彼は呼び止めた。それが初めて手を差し伸べられたみたいで、俺は少し嬉しくなった。
「行こう」
人混みの中でこのまま立っている訳にはいかないと、人気の少ない高専への道へ歩き出す。クラスメイトが隣に並ぶ。よくもまあと思うほどに口を動かしながら。
何駅か前で買ったお菓子を差し出せば、その激流も止まるかと考えたが、およそ3歩でダムは決壊した。俺はそっと息を吐いた。
やがて東京に似つかわしくない緑色が辺りを覆い、傾斜が増えてくる。古めかしい"東京都立呪術高等専門学校”の看板がかかった正門を通り抜け、大きさに反してひっそりと佇んでいる石造りの鳥居が見えてきた頃。
ふと、クラスメイトが足を止めた。
それまで嵐のような勢いで流れていた言の葉が、急に止まったのに気抜けさせられる。
「…どうかしまし───」
「A」
短く発せられたせいか、そこには不自然なほど温度がなかった。思わず肩に力が入る。
「…どうだった?実家は」
無理に作られたような、不器用に歪んだ口元の弧は、誰かに似ている。
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砂漠 - エレナさん» ありがとうございます!そう言って頂けるととても励みになります(●︎´▽︎`●︎)これからも楽しみに思っていただけるよう頑張るので、ぜひ最後までお付き合いください、、、(_ _*)) (2022年4月2日 11時) (レス) id: c817577711 (このIDを非表示/違反報告)
エレナ(プロフ) - この作品大好きです!続きが楽しみです! (2022年3月26日 21時) (レス) @page16 id: 806542db6b (このIDを非表示/違反報告)
砂漠 - お餅さん» まーたやりました。今日何回目ですか、私!!1個下のコメントはお餅さんへの返信です、、、失礼しました、、、お餅さん、コメントありがとうございました✨ (2022年1月1日 15時) (レス) id: c817577711 (このIDを非表示/違反報告)
砂漠 - コメントありがとうございます!ご期待に添えるよう、更新も頑張っていきたいと思います٩(ˊᗜˋ*)و最後までお兄ちゃんを応援してあげてください(_ _*)) (2022年1月1日 15時) (レス) id: c817577711 (このIDを非表示/違反報告)
砂漠 - あいすくりぃむとちょこれぃとさん» いや、私もタイトルとの温度差は感じていたんですよね、、、ですが地獄を見たというお言葉に笑ってしまいました😆最高の褒め言葉ありがとうございます!お兄ちゃんには幸せになって欲しいですね、、、頑張ります🔥 (2022年1月1日 15時) (レス) id: c817577711 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:砂漠 | 作成日時:2021年12月11日 11時