筆休めの物語【短編集】 (ページ46)

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□■ケルト人ですが、何か？(APH) ページ46

それは西暦一世紀頃のこと。
その頃のブリテンは古代ローマ人からの侵略に日夜抵抗の意を示していた。

「ブリテンちゃーん！」
「来んなーーーー!!」

というより、圧倒的アプローチに日夜拒否反応を示していた。
今回もギリギリで追い返すことに成功したが、正直回数を重ねる度にブリテン側の不利が多くなっている。

「いやなんでこいつ、いっつもウチに来るのさー！」
「お、落ち着いてくださいブリテンさん。まだ勝てますから！」

辛勝ゆえに身に纏った皮製の甲冑と槍を片手にブリテンは、大きく振り回して怒りを表す。
本当に腹立たしい。
ついでに毎回求婚のように迫ってくる奴が忌々しいというのに、拒むための戦力も国土も疲弊しているため対抗する手段が徐々に失われていることにも苛立ちを募らせていた。

「ゲルマン系もこっちに攻めてくる時あるし、もう本当ムカつく」

凛々しいその眉毛をこれでもかと顰(しか)めたブリテン。
その身体中には傷が絶やすことなく存在し、いずれは国として存在が危ぶまれるだろう。
国として自覚してからはほぼ戦いの日々と言っていい。
ただ、今を一瞬一秒たりとて国であることを捨てたことはなかった。

だがしかし、それも終わりを告げる。

「ブリテンちゃん……」
「……くっそ、お前なんかに看取られるなんてほんとムカつく」

国としての存在が危ぶまれる。
古代ローマ帝国によって国を征服されてしまった。

「やるならさっさと殺せ。慈悲などいらない」
「……じゃあ愛人ということで」
「は？」
「これからブリテンちゃんはローマ帝国の愛人になるの」

目を点にしてブリテンはローマ帝国を見たが、とうの本人はニコニコと笑うのみ。

「お前、私に情けを掛けたつもりか？」
「情け？違うよ。ブリテンちゃんが消えてほしくなかったからだよ」
「……それを情けっていうんだーー!!」

こうして、ブリテンは西暦五世紀頃までローマ帝国の属国として存命を続けるのだが、ローマ帝国亡き後はゲルマン人やアングロサクソン人に征服され、結果的にブリテンは滅びることになった。

のだが。

「ふふふーん。後継者の子頑張ってるなー。あいつの孫とか子供とかさっさとやっつけてくれないかなー」

お国柄なのか、それとも語り継がれることによってその存在を確立できたのか、天国で自分の後で必死に頑張っている彼を応援していた。
ブリテン、死後の方が意外と楽しくやっていた。