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数日後。
「先輩! お知らせが更新されておりますよ!」
藤丸立香は人理継続保障機関フィニス・カルデアの医療班のメンバー四人(内人間三人、神一柱)と共に、対ウイルスを撲滅するためのワクチンを夜な夜な開発に明け暮れていた。
目の下に酷い隈を作り、人一人なら射殺せそうな程鋭い目付きで医学書を読み耽る立香の元に我等が後輩、マシュがタブレットを持ってやってきた。
「……お知らせ?」
「はい! どうやら昨日26日に更新されていたようです」
タブレットを立香に見やすくするため、机の上に置いたマシュはここだと指をさす。
「……」
「どうやら一部の映画館が休館なのと、感染拡大防止のために公開を延期されるようです」
タブレットをマシュから貸してもらった立香は穴が空くほどその文字を何度も見返す。
何度見ても書かれている文字は延期の二文字。
「よかったですね先輩! これで公開初日にランサーのアルトリアさんを」
「……でかしたよマシュ、これで奴等を殲滅するための猶予が増えた」
ふにゃり、と笑う。
いや違う。
目を三日月に、口も三日月にして、立香は不気味に笑う。
「せ、先輩?」
立香はポケットから取り出したスマホに文字を打つ。
内容は、殲滅までの猶予が少し長くなったということ。
宛先はカルデア独自のチャットアプリ。
個人同士はもちろん、二名以上のグループを作ることも可能である。
程なくしてピコンピコンとメッセージを受信した音がスマホより鳴る。
アルケミストPおや? こちらはいつでも準備万端だったのですが……。
ドクターSエージェントぐた子、君がそれでいいのなら僕は構わないけど、他の二人が怒るのではないか?
エンジェルNずらすなどありえません。人々から苦しみから救うのなら早々に投下すべきです。
ゴッドAエージェントぐた子。お前が急げと言うから急いだんだぞ。遅らせることなどありえん。あと結果を早く知りたい。
エージェントぐた子だって、運営が遅らせてくれたんだもん、でもばら蒔くのはばら蒔くからその時はよろしくね?
ぽちぽちと返信を打った立香。
たまたま内容を見てしまったのだろう、何をばらまくのかと問えば立香はにこりと答えた。
「メガトン級の威力を発揮する対ウイルス用兵器」
「え、それって、大丈夫なのですか!?」
「……さあ?」
「先輩!?」
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作者名:翔べないペンギン | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Information/
作成日時:2020年7月12日 2時