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飛び起きた。
自分の粗い息遣いが聞こえる。
周囲を見渡せばあの廃墟ではなく遮光カーテンから漏れる日光に照らされた自身の汚い部屋が視界に入る。
「ゆ、め?」
手を見ればAを抱き起こした時に着いたはずの血は綺麗に無くなっている。
だが、手には確かに彼女を抱き起こした感触を覚えていた。
「っまさか!」
慌てて家を出たところ“生きている”Aが驚いたように私を見上げていた。
「おはようございますウェイバーさん、パジャマのままですがどうし」
「ッA!」
「え⁉」
抱き締めた、強く強く、彼女がここに居ると確かめるように。
「良かったッ、生きていたッ」
「!」
「大丈夫、大丈夫ですウェイバーさん。私は此処にいます。だから落ち着いてください」
優しくそう言ったAはまるで子をあやすように私を抱き返し背を撫でる。
慈愛に満ちた聖母のように、私が落ち着くように大丈夫と何度も声をかけてくれた。
Aは此処にいる、あの夢のように血の海に溺れてはいない。
「! ウェイバーさん、ウェイバーさんのお家に入りませんか? 此処は人の目がありますから」
しばらくすればAが困ったような声色で私を呼ぶ。
黙ったままの私に肯定と取ったのだろう、どうにか私の家に私を連れて入ろうとしていた。
開けたままのドアの中を入り、扉を閉めようとしたようだが足が
「A!」
咄嗟に彼女の頭を守るように片腕で抱き込めば一緒に倒れ込んだようだ。
遅れてドアが閉まる音が何処か遠くで聞こえた気がした。
「いたた……」
背を打ったのだろう、見下ろしている彼女の顔が少し歪んでいた。
薄暗いせいか、肌が青白く見える。
「? ウェイバーさん?」
私を見上げるAに、血塗れの彼女と錯覚してしまう。
「死ぬな、死なないでくれッ」
驚いたように目を剥くAの瞳の中には泣きそうな自分の顔が映り込んでいた。
私を、僕を置いて行かないでくれ。
手を伸ばされた。
そのまま優しくAは私の頭を抱き締めたらしい、耳に彼女の鼓動が聞こえる。
「私の心臓の音が聞こえますか?」
トクリ、トクリ、と一定間隔で刻まれる命の鼓動に頷く。
「私は生きています。だから、怯えなくていいのですよ」
慈しみを持って私の頭を撫でる彼女に、再度頷いた。
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作者名:翔べないペンギン | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Information/
作成日時:2020年7月12日 2時