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■とある少年の話(FGO/企画派生) ページ18

とあるところに一人の少年がいました。

彼の家は代々魔術師の家系の家でした。

しかし近年、その家からは魔術回路を持たない者達が多く生まれており、一族の危機とまで言われるほど衰退しておりました。

そんな中で、彼は魔術回路を持ってこの世に生を受けたのです。

──あぁ、なんてありがたいことなのでしょうか。

──きっとこの子は一族を救ってくれる子になるに違いない。

両親や親戚一同はこぞってそう思いました。

彼に自由はなかった。

一族の魔術刻印を受け継ぐため、その幼い身体に有り余る程のある種の拷問に近い"お勉強"を強いられていたのです。

恐怖に顔が歪み、悲鳴を上げ、監視をしている親戚の一人に助けを求めました。

──怖い、助けて!

少年は懇願しました。

身体中の魔術回路を書き換えられる苦痛と嫌悪から逃れたいため。

手を伸ばし、助けを乞いました。

しかし、その手を取られることなく監視役の人は言いました。

──私達に無いものを持っている癖に、甘えたことを言うんじゃない。

底冷えするような、嫉妬という醜い感情を隠すことなく、吐き捨てるように少年へと言ったのです。

少年は幼いながら理解しました。

あぁ、この家には誰も味方はいないのだ、と。

理解した少年は絶望しました。

絶望して、そして怒りを抱きました。

何故俺だけこのようなことをされるのか。

何故俺だけ魔術回路を持っているのか。

何故ッ、何故ッ、何故ッ!

無事に一族の魔術に適した魔術回路に書き換えられた少年は泣いて(怒って)いました。

この世の理不尽さに、自分の運命に、泣いて(怒って)いました。

定期的に行われる"お勉強"は、少年の心を磨耗させていく。

耐えきれない程の悲しみ(怒り)に、ある日の夜、とうとう少年は逃げ出してしまいました。

逃げ出したところで彼は子供。

スコットランドヤードに保護されて家へ送り返されるか、悪い人達に掴まって売られるかしかない。

だが、幸か不幸かその日の夜は濃い霧が出ていました。

傷付いた幼い少年の姿は誰の目に止まることなく、少年は宛もなくさ迷う。

目的地もなく誰もいない場所を探しました。

落ち着ける場所を、誰も自分を傷付る人がいない場所を……。

ただただ、さ迷い続けました。

どれぐらい歩いたのか。

回りが霧で何も見えないため少年は今何処にいるのかわからなくなりました。

──このまま消えてなくなるのもいいかもしれない。

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作者名:翔べないペンギン | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Information/  
作成日時:2020年7月12日 2時

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