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■気になる不思議な人(Fateシリーズ/佐々木小次郎) ページ1

その人はいつの頃からか夜だけ柳洞寺の直ぐ側の林によくいた。

今では珍しい着物を着ているその人はどこか凛としていて、でも何処か儚げに感じるの何故だろうか。

よく瞬きをした瞬間に消えていることが多いので現代にまで生き残っている忍者の末裔か、もしくはこの世に未練がある幽霊か何かかと思っている。

「A、それ絶対恋だよ」
「いやそれはないでしょ藤村ちゃん」

同級生の藤村ちゃんこと藤村大河とは高校を卒業しても、こうして休みの日にカフェでお茶をするくらいには仲が良い。

「だってー、昔からAってばモテていたのに全然そういう気配なかったしー」
「いやだって側に藤村ちゃんみたいな男前いたら同級生とか子供に見えるでしょ」
「え、それ褒めてる?」
「褒めてる」

不満げな藤村ちゃんだけどやや行儀悪くもフォークで指さしつつ、頼んだメロンソーダのストローに口を付けながら話す。

「褒められた気しないんですけど」
「ごめんて。でも、どうして恋だと思ったの?」
「だってA、その人の話しする時の表情ものすんごい可愛い顔してるから」
「は?」
「あ、今のは可愛くない」

無言で藤村ちゃんが頼んだレアチーズケーキを半分ほど奪って食べてやれば声を荒げて怒ってくる、かと思えば私が頼んだガトーショコラを半分以上食べるので軽く喧嘩になったけど、お互いまた頼み直すことで仲直りとなった。

「遅くなったけど住職様起きていらっしゃるかな……」

月明かりに照らされた長い階段をやや駆け足で柳洞寺へと急ぐ。

家が檀家(だんか)のため、定期的に両親や親戚の代理で柳洞寺に伺うことが多い私なのだけどその日は仕事で遅くなってしまっていた。

社会人になってからか、非常に体力の衰えを感じるしてしまう。

今度藤村ちゃんにお手合わせ願おう。

そう考えながら階段を登っていれば少し先の踊り場にあの人が月を見上げていた。

思わず足を止めてしまう。

「今日の月は一段と美しい」
「!」
「そう思わないか、娘さん」

目が合った。

初めて聞いた声は非常に穏やかでいて、そしてとても優しい音だった。

「そ、そうですね。今日は満月ですからとても綺麗ですね」

(ども)ってしまったことにやや恥ずかしさを覚えつつそう返せば、その人はおかしそうに笑んでいた。

何かおかしなことを言ったのだろうか。

「失敬。気にしないでくれたまえ」
「?」
「それよりもこのような夜更けに貴女のような娘子が此処へ何用か」

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作者名:翔べないペンギン | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Information/  
作成日時:2020年7月12日 2時

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