同居人は有名人 5 ≪ﾆﾉﾐﾔｶｽﾞﾅﾘ≫ (ページ29)

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明日香さんページ29

綺麗なお辞儀をする人だな。

なんて考えていると、顔をあげた明日香さんは

明『突然、ごめんなさい。』

長年、羨ましくて、妬ましくて仕方なかった人が私に謝った。

明日香さんの一つ一つの行動をぼーっと眺めていたら、中山さんが

中『座ったら？』

って、うながしてくれた。

明日香さんの隣に中山さんが座る。
私は二人の目の前。明日香さんの顔がよく見える。

中山さんが、飲み物を頼んでくれた。
飲み物が来て、ちょっとたった頃。

中『ほら、明日香。』

中山さんが明日香さんをつついて。
明日香さんは口を開く。

明『あの、ちゃんと会うのははじめましてですね。私、雪野明日香と言います。』

『…はじめまして。橘Aです。』

少し、沈黙。
静かな店だから、本当に静かになって。

私の胸の音が聞こえるんじゃないかと思った。

明『あの、どうしてもあなたに彼のことで話したい事があって。だからこの間も公園にいたんです。』

やっぱり。

『先輩のことですか？偶然あそこで会っただけです。何もありません。もう…会うこともないですから…』

少し、早口で。
目も合わせられなくて、机の角を見ながら言った。

明『あの、彼はなにも言ってなかったですか？』

先輩の話し？

明日香さんに目を向けた。

明『やっぱり、何も言ってないのね。』

少しため息をついて。

明『その、長くなるんだけど聞いてもらえますか？』

どくん。

なんの話し？

でも、少なくとも明日香さんから怒りは感じれなかった。