マフラー《Shoma.Uno》 (ページ1)

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「ねぇ、どうして泣いてるの？」

「…え？」

私に向かって伸びる小さな手。

「こんなところで泣いてたら、風邪ひくよ」

そう言って、小さな彼は自分がつけていたマフラーを私に手渡した。

「あ、ありがとう…」

私がそう言うと、彼はふにゃりと優しく笑って、向こうへ走っていった。

ー優しくしてもらったー

これは当時３歳だった私にだって分かった。

3歳の冬の出来事が忘れられずに、今でも鮮明に記憶に残っている。

「お母さん！スケート楽しかった！習いたい！」

5歳になった私は、この前1度遊びに行ったスケートにハマって、習いたくて仕方がなかった。

「それなら、体験でもしてみる？」

「うんっ！」

「スケートリンクは寒いからね、あったかい格好して行こう」

「分かった！」

私はあの日以来ずっと宝物のマフラーを手に取った。

そして、何度も何度も見返してきたマフラーのタグをもう一度見る。

〝しょうま〟

紛れもなく、あの男の子の名前だ。

私はそれを少し見つめてから、くるっと首に巻き付けた。