第4話 ページ5
ｰ松本sideｰ
翔くんがいない部活は、究極に楽しくなかった。
あの後、東山先輩と…その他もろもろ、数人が部活に来たが、俺はやる気になれなかった。
結局、1枚だけ作品を仕上げて、後はぼーっとしてた。
俺はチャリ通だ。
部室から少し離れた駐輪場へ向かう。
近くまで来ると、俺のチャリの近くに1人の男子が待っていた。
「あー、ニノ…」
「ぇえっ、何その反応…笑」
「いや、今日は元気がなくてですね…」
「え、だいじょぶなん？バットで頭打たんくていい？今日調子いいからホームラン打てるよ」
「どういう冗談なの…」
自転車の鍵を外し、鞄をカゴに入れる。
野球のユニフォーム姿のニノは、他の野球部仲間にハイタッチしてから、俺についてきた。
「え、ニノ、通学路反対じゃねーの？」
「ええー…ここまで来れば悟れますよね？」
チャリに乗せろってか…。
「お前、怒られんのはこっちなんだぞ？ちゃんと配慮しろよ…」
「まーまー、いいからいいから」
俺の後ろに続き、ニノも自転車にまたがる。
少しだけ、自転車が沈む。
「…ニノ、重くなった？」
「んー…ま、筋トレ続けてるからね」
いや、原因は違うと思うが…。
そう考えながら、ペダルをグッと踏んだ。
「あー、待って」
「…え？」
慌ててブレーキをかける。
少し自転車がぐらついた。
少しだけ、沈黙が流れる。
「…いや、いいや」
…え、どゆこと？
「いーからいーから。さあ、レッツゴー！松本号！！」
俺は、気になりながらも渋々ペダルを漕いだ。
…翔くんも、こんなだったよね…。
なんで皆、何か言いかけてから止めるんだ…？
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作者名：櫻井チコ | 作成日時：2020年2月8日 22時
