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ああもう悔しい、最悪な気分だ。
Aを取られたのも悔しいし、湧の前で泣いちゃったのも悔しい。
人生でこんなに悔しいって思ったの、初めてかも。
湧と分かれて Aが待つ観客席に急ぐ。
袖で涙を拭うと、目の下がぴりぴりと痛くなる。いつもはAのハンカチを借りてたから、
些細な所で思い出しては、足取りが重くなる。
好きになったのは、小学生になる少し前。
公園で隠れんぼをしていたら 俺だけ誰にも見つけられずに皆が帰ってしまって、遠くから聞こえるばいばいにじんわりと涙を滲ませる。
それが悲しくて、土管の中でひとり膝を抱えていたら 息を切らしたAが見つけ出してくれた。手を、引いてくれた。
『しょうまは、ほんとにわたしがいないとダメだねえ？』
｢…うん、そうかも！だからずっと一緒にいて！｣
その時まではただの幼馴染だったのに。
これが恋だって、幼いながらも気付いた。
女の子みたい、と言われ過ぎて嫌だった大きい目、でもAが褒めてくれてからはチャームポイントとして受け入れられた。
楽だから、とノーセットばかりだった俺だけど、友達伝にAが好きな髪型を知ってからは1日足りともセットを怠った事は無い。
覚えてる？
全部ぜんぶ、Aの影響なんだよ。
堪らなく好きだって、全力で行動と言葉で示してた。
｢…A、｣
『遅かったね、…って、なんで泣いてるの、』
｢湧が呼んでるよ、下の、入口に来てだって｣
『う、ん…ひとりで大丈夫？』
｢…大丈夫だよ、俺強いから、｣
頑張って送り出すからさ、
今だけは、涙がとまらなくても仕方ないよね。
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作者名：そり
| 作成日時：2020年8月4日 19時
