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0-3で試合が進み、ヒットはあったものの得点にはならず、ホームランも打てていない。
…最終回裏、満塁。
｢元木、いけるか｣
｢…うっす、｣
手が震えるほどの緊張感。
代打として送り出され、バットを強く握りしめながらAちゃんがいる方へと視線を向ける。
すると、座っていたはずの彼女は、長く綺麗な髪を風で揺らしながら 真っ直ぐに俺を見つめていた。
まるで、何かを期待しているかのように。
…二つの意味でうるさくなる心臓をぐっと抑えて、ヘルメットのつばをあげる。
ここで決めなきゃ、男じゃないだろ。
ピッチャーが大きく振りかぶり、風が横切ってボールはキャッチャーのミットに吸い込まれる。
1度は見逃して、唾を飲み込んだ。
…今度こそ、
なんの為に毎日放課後練習して、レギュラーを勝ち取ったんだ。
必ずホームランを打って、Aちゃんに伝えなきゃいけない事がある。
近付いてくるボールに向かってバットを振り下ろす。
｢…っ、｣
手がビリビリと痺れた後、ボールはカキーンといい音を出して、フェンスの中に飛んで転がり落ちた。
刹那、会場が大きく沸く。
塁に出ていたチームメイトが次々に帰ってくる。ハッと飛びかけていた意識を取り戻して俺も走り出した。
…逆転サヨナラ満塁ホームランだ、
一周回り終わり、ホームベースに右足をつけると、仲間が雪崩込む。
｢湧くん！凄すぎます！！｣
｢…俺ちょーかっこよくね？｣
｢俺には見えました！告白が成功する未来が！｣
興奮する後輩の肩越しに、Aちゃんとぱちっと目が合った気がした。
｢…Aちゃん！！あとは、言うだけだから！｣
だから、待ってて。
手でピースを作ると、Aちゃんからもピースが返ってきた。
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作者名：そり
| 作成日時：2020年8月4日 19時
