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試合前、グラウンドから観客席を見上げて 大好きなあの子を探す。
…ああ、緊張する。勿論、いつもの試合も緊張するけど 今日は桁違い。だって、好きな子が見てるんだもん。
学校でも意識しちゃって全然話せなかったし、こんな俺に告白なんて出来るのか…なんて、弱気になってしまう。
｢湧くん、誰探してるんですか？｣
｢…や、別に｣
中々見つけられずに辺りを見回していると、グローブをつけた後輩に後ろから肩を組まれた。生意気な奴だな、と思いつつも払い除けることはしない。
さすがに好きな子が、とは言えず口篭ると、｢…もしかして彼女さんですか！？｣ と今度は肩を揺らされる。
｢ちげぇよ。…まだ、｣
｢まだって…。くっそお…湧くんは野球部唯一のフリー仲間だと思ってたのに…｣
｢お前ふざけんなよ (笑)｣
勝手に仲間にすんじゃねえ、と肩をどついてもう一度観客席に目を向けると、フェンスを掴みながらこっちを見る "大好きなあの子" を見つけた。
｢…え、｣
でも高鳴る気持ちは一瞬にして崩れ落ちる。何故なら、隣に平塚がいたから。
…ま、焦らない焦らない。両想いって事は分かってるんだから。何も焦ることは無い。
｢…なあ、｣
｢なんですか？｣
｢俺、今日絶対ホームラン打つわ。｣
｢ああ…、一生忘れられない告白になりますね｣
｢…お前、エスパー？｣
｢何言ってんですか｣
なんで平塚がいんのかは分からないけど、
Aちゃんの隣は俺のもんって、今日ここで決着をつけてやる。
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作者名：そり
| 作成日時：2020年8月4日 19時
