逆転満塁ホームラン！【Waku.m】 (ページ30)

今日:16 hit、昨日:8 hit、合計:177,655 hit

30 ページ30

･

…なんにも楽しくない。

それが、今の正直な俺の気持ち。

隣でおろしたてのワンピースに身を包んでフェンスに指を絡ませるAは、『湧くんスタメンなんだって、凄いよね』とグラウンドにいる湧に熱い視線を送る。

｢…何が楽しくて俺も試合見なきゃいけないの、｣

『私、野球のルールってよく分かんなくて』

｢俺も別に詳しくないよ｣

『でも、私よりは分かるでしょ？』

｢…まあ、｣

憎たらしいくらい晴天の今日、日曜日。
すっかり熱も下がってベッドの上でごろごろしていると、突然Aにしょうま出掛けよう！なんてお誘いを受けて。

もちろん二つ返事で承諾して、すっごく楽しみにしてたのに。着いた先は野球部が試合を控えるグラウンド。

…きっと、Aは俺と湧が喧嘩したままなのを気にしている。自分のせいでって思ってる。

さっきからチラチラと俺の反応を伺っているのがその証拠。

…俺がAに怒れないの、わかってる癖に。
深く息を吐いてスマホの電源をつける。

俺達の喧嘩なんて放っておけばいいものを、…本当に俺の幼馴染はお人好しだな。でも、そんな所が堪らなく好きなんだよね。

｢A、隣座りなよ。試合始まる前にルールの予習しよ｣

『！うん』

｢…勝てるといいね、｣

俺も、覚悟を決めなきゃ。

きっと、今日は苦しい一日になるだろうから。

･