逆転満塁ホームラン！【Waku.m】 (ページ22)

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『…』

｢…Aちゃん、そろそろ電源切らないと｣

『あ、ごめんね、』

Aちゃんは、何を気にしてるの？

もしかして、と頭に過ぎったひとつの可能性を振り払って始まった映画に集中する。

…なーんか、ザ青春ラブストーリーって感じで甘酸っぱい。

隣のAちゃんを盗み見ると、口を開けながらのめり込んでいて。…可愛い(笑)

そんな彼女の耳元に口を寄せて｢口開いてるよ、｣と呟くと、バッと耳を抑えて今度は恥ずかしそうに口を噤む。

『…びっくりしたじゃん』

｢ごめんごめん｣

『映画に集中して！』

小声で怒ったようにそう言ったAちゃんにもう一度謝ってスクリーンに目を向ける。

…幼馴染同士の恋愛ストーリーなんか観てても面白くねえんだよなあ、

眠気に襲われながらも話半分に聞き流して、気付いた時にはエンドロールだった。

…Aちゃんが見たいって言ってたヤツだし、話合わしとくか、

｢いやあ、よかったね…って、｣

『やばい…めちゃくちゃ感動した…』

｢嘘じゃん(笑)｣

『なんで湧くん泣いてないの！？』

｢女の子の前では泣きませ〜ん、｣

嘘です、見てなかったんです。それにしても泣きすぎじゃね？

ポップコーンを買った時についてきた紙ナプキンを渡すと、Aちゃんは控えめに受け取った。

そして、またスマホの電源をつける。

『…しょうま、大丈夫なのかな、』

…聞いてない、俺は何も聞いてない！

すぐにLINEをチェックしてたのも、見てない振り！

…俺とデートしてんのに、他の男の名前出すのはルール違反でしょ、

やっぱり、ぽっと出の俺じゃ幼馴染には勝てない？

待ち受けるのはこの映画の脇役みたいに振られる筋書き(ストーリー)なのかな。

彼女の横顔を見つめながら、ぐっと唇を噛んだ。

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