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『しょうま、ここ座って』
｢消毒痛いからやだ｣
『何歳なの！(笑)』
脱脂綿を持ってもうひとつの椅子に座ったA。
消毒液を染み込ませたそれをほっぺに当てられて、びくっと肩が揺れてしまう。
…湧 絶対本気で殴ってきたやん、めっちゃ痛いし、
Aは何も聞いてこない。
俺が怪我をした理由も、湧と二人でいた理由も。
…いや、聞きたくないのかなあ。俺は鈍いから分からない。
『ん、終わり。ガーゼどこだろう…』
｢ガーゼ…あ、A！そういえば あの絆創膏俺貰ったことないよ？初めて見たし｣
『しょうまには犬のやつあげてるでしょ？ほら、らぶちゃんに似てる…』
｢猫もほしい｣
『もう、またそんなわがまま言って、』
呆れたように ガーゼを探そうと立ち上がろうとしたAの腕を引けば、バランスを崩して 簡単に俺の方に倒れてくる。
足を広げて空いたスペースにAを座らせて、後ろから逃げられないように腕の中に閉じ込めた。
｢…A ドキドキしてる？(笑)｣
『…違う、びっくりしたの、』
｢そっかあ。俺のほっぺにも絆創膏貼ってよ｣
『ガーゼじゃなくていいの？』
｢うん、猫がいい｣
『すぐ取っちゃだめだよ、バイ菌入るから』
取るわけないよ、そんなの。
だって Aがくれた絆創膏だもん。
そのままの体勢で顔だけを俺の方に向けたAは、貼るね、と顔を覗き込む。
…ちゅーしたら、さすがに怒るかな。
漫画とかだと、無理やりちゅーをしたらそこから意識しだして…みたいなのが定番だよね。
｢A、｣
湧の所に行っちゃやだよ、
至近距離にある唇に触れようと、身を乗り出した。
触れるまで、あと数センチ。
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作者名：そり
| 作成日時：2020年8月4日 19時
