変態 ページ27
「うーん、走ったら汗かいちゃった」
2回目の赤葦くんとの帰り道。
私はそう言ってハンカチで首周りを拭った。
汗臭かったらどうしよう。
心配になるが、赤葦くんの前で堂々と制汗剤を取り出せるほど肝は太くなかった。
はしたないというか何というか……
身だしなみ系のことは人前でするものではないと個人的には思っている。
私がぱたぱたと襟元に空気を入れていると、赤葦くんが言う。
「あ、俺のシーブリーズ使う？」
……！
私は自分が目を見開いていなかったか心配する。
シーブリーズ、本当は自分のがある。
でもさ、でもさ。
これ、赤葦くんと同じ匂いになるってこと……！？
もう私の心臓はどきどきを超える。
バクバクだ。
「え、いいの？ありがとー！」
ああああ！
こいつ……いや自分だけど！コミュ力高いんだよばか！
自分の強気に内心青ざめたが、現実の私は赤葦くんから何食わぬ顔で容器を受け取っている。
いいや、もうハシタナイとかどうでもいいです。
でもごめんなさい、不純な気持ちで借りて本当にごめんなさい。
頭の中は全力土下座大会だった。
「あ、グレープフルーツあじだ！」
蓋を開けてそう言った私に、赤葦くんは笑った。
「……木兎さんも味って言うんだよね」
5月。
少しずつ夏が混ざり始めた風の中、街灯の光が赤葦くんのきれいな笑顔を照らす。
部活後の赤葦くんからグレープフルーツの匂いがふわっと漂った。
だめだ、瞬間汗きゅんするわ。
広瀬すずちゃんは"同じ匂いやべえ……！"なんて言わないだろうなー、と思いながら私はボトルを返した。
＿＿文化祭、私の心臓もつかな。
そんなことを考えながら駅まで歩いた。
***
前ぶれもなく木兎さんがいなくなって俺は驚く。
……木兎さん、こういうの気使ったりするんだ。
俺は木兎さんに感謝しつつAさんと帰り道を歩いた。
俺もA、って呼んでもいいかな。
俺は暑そうなAさんを見つつ思うが、すぐにその考えは霧散した。
いや、待って胸元締めて。
ワイシャツをぱたぱたしながら煩わしそうな彼女に、何を言えばいいのか迷う。
というか、目のやり場に困る。
ああ、今まで女子のワイシャツなんて気にしたことはなかったんだけどな。
＿＿この間0.5秒。
「シーブリーズ使う？」
俺は言った後に気づく。
普通に部活のノリで言ってしまったが。
Aさんが俺と同じ匂いに………
なんと、赤葦も同類だった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 265人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
はるこん(プロフ) - 無気力なおバカさん» 恋愛と関係のないシーンなので入れるか迷っていたのですが、共感していただけてとても嬉しかったです！ペースは遅いですが、見捨てないで読んでいただければありがたいです笑 コメントありがとうございます！ (2020年4月15日 19時) (
レス) id: 99f376c927 (このIDを非表示/違反報告)
無気力なおバカ - 面白いです!!『文化祭の陰』のところの最後の「女子というのは恐ろしい」ってところものすごく共感します！！それと、赤葦くんやはりイケメンですねぇぇ。夢主ちゃんの性格もかわいくて素敵!!これからも更新頑張って下さい!!!!!! (2020年4月15日 2時) (レス) id: 9900cccf42 (このIDを非表示/違反報告)
はるこん(プロフ) - りんごあめさん» 一話書くのに時間がかかるタイプなので、内容を褒めていただけるのはとても嬉しいです！更新がんばります。 (2020年4月4日 10時) (レス) id: fde04c5d32 (このIDを非表示/違反報告)
りんごあめ - 初めて見ました！赤葦さがちゃんと残っていて、更に内容まで凝ってるだなんて！凄い技術ですね!これからも更新頑張ってください！楽しみにして待っています！ (2020年4月1日 23時) (レス) id: e7faacb67c (このIDを非表示/違反報告)
はるこん(プロフ) - コメント嬉しいですーありがとうございます！ (2020年3月27日 10時) (レス) id: fde04c5d32 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：はるこん | 作成日時：2015年12月7日 22時
