アカーシの勇気 ページ24
「おー!できたー!」
午後4時。
クラスの内装が終わり、手の甲で汗を拭う。
私達はこの後、第2体育館でライブのセッティングだ。
部室からドラムセットを含めた機材を運ばないといけないし、7時までに終わらせるのはかなりシビアなスケジュールだ。
部員にはクラス準備後すぐの召集がかかっている。
急がなきゃ。
「よしA!体育館行くぞー!」
「はーい、わ」
乃亜の声に立ち上がった途端、不意に誰かに腕を掴まれる。
「ど、どうしたの、赤葦くん」
振り返ると、赤葦くんが何故か驚いたように立っていた。
腕を握る手の感触で、赤葦くんの手が大きいのを感じる。
その後少し間を開けて赤葦くんが話しだした。
「……あ、ごめん。文化祭、Aさん誰と回るか決めてる?」
「え!っとまだ、だけど……」
びっくりして声がひっくり返りそうになった。
これはもしや一緒に回ってくれるみたいなあれですか。
うわうわうわうわ。
私は嬉しくて思わず赤面するが、すぐに部活のことを思い出す。
文化祭中はPAのローテーションが入っているのだ。
ここでいうPAというのは簡単に言うと音響担当のことで、ライブ中に各楽器、マイクの音量バランスを調整する仕事だ。
地味な裏方の様に思われるかもしれないが、ライブのクオリティの30%くらいはPAにかかっていると思う。個人的には。
残念だけど、そんな大事な役割をすっぽかす訳にはいかない。
ええ、赤葦くんと文化祭……行きたかったなあ……
心の中でため息を吐きまくりながら断ろうとしたとき肩を叩かれ、振り返ると乃亜がぐっと親指を立てていた。
「ふっふっふ。A。卓は任せといて!」
「乃亜……!えっと」
持つべきものは友。
乃亜が神様のように輝いて見える。
乃亜と和解しておいて本当によかったと改めて思う。
あとでガリガリ君おごってあげないと。
「よ、よろしくお願いします」
私が赤葦くんに向き直ると、突然クラスに拍手が巻き起こった。
何事だろう。
赤葦くんも驚いて目を丸くしている。
「準備中ずっといい感じだと思ってたんだよ〜」
「いやー、すっきりした!」
私と赤葦くんは拍手の渦の中で立ち尽くす。
「……ごめん、みんなの前で」
「ううん」
嬉しいからいいよ、と言いかけて私は口許を抑えた。
私、もう赤葦くんのこと、好きなんだ。
それに気づいてしまった私は、なかなか顔を上げられなかった。
265人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
はるこん(プロフ) - 無気力なおバカさん» 恋愛と関係のないシーンなので入れるか迷っていたのですが、共感していただけてとても嬉しかったです!ペースは遅いですが、見捨てないで読んでいただければありがたいです笑 コメントありがとうございます! (2020年4月15日 19時) (レス) id: 99f376c927 (このIDを非表示/違反報告)
無気力なおバカ - 面白いです!!『文化祭の陰』のところの最後の「女子というのは恐ろしい」ってところものすごく共感します!!それと、赤葦くんやはりイケメンですねぇぇ。夢主ちゃんの性格もかわいくて素敵!!これからも更新頑張って下さい!!!!!! (2020年4月15日 2時) (レス) id: 9900cccf42 (このIDを非表示/違反報告)
はるこん(プロフ) - りんごあめさん» 一話書くのに時間がかかるタイプなので、内容を褒めていただけるのはとても嬉しいです!更新がんばります。 (2020年4月4日 10時) (レス) id: fde04c5d32 (このIDを非表示/違反報告)
りんごあめ - 初めて見ました!赤葦さがちゃんと残っていて、更に内容まで凝ってるだなんて!凄い技術ですね!これからも更新頑張ってください!楽しみにして待っています! (2020年4月1日 23時) (レス) id: e7faacb67c (このIDを非表示/違反報告)
はるこん(プロフ) - コメント嬉しいですーありがとうございます! (2020年3月27日 10時) (レス) id: fde04c5d32 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:はるこん | 作成日時:2015年12月7日 22時