【HQ】赤葦さん、赤葦さん。忘れ物ですよ。

文化祭準備 ページ23

そしてとうとう文化祭前日！


今日は学校も授業がなく、まる一日が教室の装飾などに費やされる。

皆も私の髪型に慣れてくれて、とてもいい雰囲気で作業が進められている。

そして実は、うちの高校はクラスの出し物を2クラス合同で行うのだ。

ちなみに私のいる５組は６組と共同制作だ。


そう、６組には。


「Aさん、そっち看板できた？」


赤葦くんがいます……！！


「うん、色塗り終わってるよー」


私はどきどきしているのがばれないように平静を装った。


私達がやるのはクレープカフェだ。

緑と白をイメージカラーにしよう、ということになり、内装も結構凝っている。

イメージするなら、カフェデュモンドを想像してもらえばいいと思う。


そして、一緒に作業をしていて分かったこと。


赤葦くんは、私が想像していた以上にモテていた。


「あ、あかあしくん……これ借りるね」

「うん、どうぞ」


話しかける女子がみんな照れている。

正直気持ちは分かる。


私も気を抜いたら『あ、あかあしくん……』になりそうだ。


私がくだらないことを考えていると赤葦くんが近づいてきた。


「乾いてそうだね、もう付けちゃっていいかな」


私にそう聞いた赤葦くんが少し屈む。


か、顔近いよ……


赤葦くんの髪の毛は、ジャンプーというよりは石けんっぽい匂いがする。

私はどきどきしながらなんとか言葉を絞り出して答える。


「よろしく、ありがと」


どうも、と言うと赤葦くんは重いキャンバス地の看板をひょい、と持ち上げる。

看板を取り付ける赤葦くんの腕がたくましい。


もう、うん、かっこいいわ。


私はどきどきしないのを諦めた。



＿＿


「ねえ、"アカアシくん"」


床に広げたダンボールに色塗りをしているとき、誰かに声をかけられる。

はい？と作業から顔をあげると、そこにはAさんの友達の片瀬乃亜さんがいた。

彼女はさっと俺の前にしゃがみこんで不敵に笑った。


「あのさ、Aめちゃくちゃモテるからね？」


一瞬、どきりと心臓が鳴る。


「ぼーっとしてると取られちゃうよ〜」


俺に耳打ちすると、片瀬さんは別の作業に行ってしまった。


「……分かってるよ」


虎斑はこの機会に、と連絡先を交換するタイミングをずっと狙っている。


俺は虎斑を横目で見ながら、唇を固く結んだ。

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