【HQ】赤葦さん、赤葦さん。忘れ物ですよ。

退屈 ページ13

ボンボボーン


アンプを繋がないままのベースを適当に鳴らしてみる。

バンド練習のとき以外はアンプを繋げないのだ。


……やっぱアンプないとつまんないなー。



「ちょっとA〜もうすぐ文化祭だよー？
やる気！やる気出して！！」

「え〜」


乃亜が隣でむくれて言う。


もうかなり曲練習したんだけどな。


「ごめんごめん」


君らの暗譜が間に合わなくて合わせられないんじゃない。

悪態を吐きたくなるのを抑えて謝る。

文化祭が近づいてきて乃亜も焦ってドラムに向かいだしたけど、普段は何かと理由をつけて練習に来ない。

全員が揃っていることなんてほとんどないと思う。


文化祭だけ目立ちたい人ばっかり。


そんな性の悪い考えまで浮かんでくる。

ベースを弾きたくて入った軽音楽部だけど、大会にも出ないし実際かなりユルい。


＿＿一人じゃ、できない。


梟谷の運動部はスポーツ推薦の人も多くて、男子バレー部は特に盛んな部活だ。

正直、赤葦さんに部活の名前を言うのが恥ずかしかった。


『軽音辞めたくなったら来いよ！』


木兎さんの発言を思い出してまた練習の手が止まる。


……なんか、今日は集中できないな。



「……私、用事思い出したから帰る」


乃亜は少し不服そうな顔をしたけどいつも練習に来ないことに後ろめたさを感じているのか、言及してくることはなかった。


集まって個人練するならひとりでしても同じだし。


とはいえ感じる若干の罪悪感を振り払うように
私は教室を出た。

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