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Epilogue ページ47

「陽香、おめでとう」

「ありがとう、お姉ちゃん」

「おめでとう陽香ちゃん」

「ありがとうございます、福良さん。お姉ちゃんのこと、頼みます」

恋人同士になったと陽香に電話で報告した時は、陽香は電話越しに泣いてるように聞こえた。
何も泣くことじゃないでしょう、と思ったが、陽香は陽香で福良と同じ分だけ私たちを見てきたらしい。
私の葛藤も、福良の葛藤もまとめて近くで見てきたのだから、と言われれば私は何も言えなかった。

黒いスーツを身に纏った福良の隣で、ネイビーのパンツドレスの私。
一緒に買い物に行った時、スカートを着てほしいというリクエストを無理だと断ると、福良は目に見えて肩を落とした。
その様子があまりにも可哀想に思えて、仕方なく袖がレース仕立ての物を選ぶと、今度は満足そうに笑った。
レースはあまり好きではないが、福良が嬉しそうならそれでいいやと思うほどには私は福良のことが好きだと自覚するようになった。

ちらりと福良を見上げると、壇上に座る陽香と蓮をまっすぐに見ている。
そして視線はそのまま、私の手をそっと握った。

「俺らも早くあっち側に行きたいな」

「…何を」

「やっと捕まえたんだ。もうあとはあそこに2人並んで座る以外の選択肢、俺にはないよ」

「アンタは良くそういうこと照れもなく言えるよね」

「Aは俺がこういうこと言うと照れてくれるんだ?」

こうやっていつも強気な福良に私は散々振り回されている。
恋人になった福良は私のことを名前で呼んで、可愛いだとか、綺麗だとか、よく私を褒めることを口にするようになった。
恋人同士になってもそんなに変わることはないと思っていたので、最初こそ戸惑ったが、今では福良に振り回される私の図がすっかり定着した。

「福良、」

「何?」

「私、幸せだよ」

「俺もだよ」

福良が笑うと自分の悩みが溶けてなくなるように感じる。
私が思い出せる限りの一番辛かった瞬間は初恋が儚く散った時だ。
その時、福良は私の隣にいなかった。だがその時以来、福良はずっと私の隣にいる。
福良が隣にいたから、私は救われたんだ。




“Where troubles melt like lemon drops”
−困難がレモンドロップのように溶ける場所−




おわり

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作者名:シロ | 作成日時:2021年3月19日 2時

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