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次の日、少し遅めに出社すると福良は会議中で、部屋に入ると青木がパソコンを睨んでいた。
「あー!東郷さん!」
オフィスに入るなり青木の声が耳をつんざく。
相変わらず賑やかなやつだ。
「朝から元気だな…」
「東郷さん、体調大丈夫ですか?さっき福良さんに聞きました」
「うん、もう万全」
「あ、東郷さん。おはようございます」
会議から戻ってきた山本に後ろから声をかけられる。福良もその後ろに続いている。
福良は私の顔を見て、嬉しそうに笑った。
「おはよ、山本」
「なんの連絡もないから心配しましたよ」
「ごめんごめん」
さあ、仕事を始めようとした時。
席に着いた私の後ろを通った福良が、私の肩に手を置いた。
見上げれば、福良はおはよ、と小さく呟いた。
その手からは昨日までの気まずさは感じられない。
今までと同じ、安心できる福良の手だ。
手が離れた時、陽香の言葉を思い出した。
“お互い信頼し合ってて、友情よりももっと深いつながりがあるんじゃないかって”
福良は大学の頃から常に隣にいた。
嫌なことがあれば愚痴をぶつけて、嬉しいことがあれば福良に教えたくなる。
信頼してるし、信頼されてると思う。
友達には話さないことも福良には話してきた。
じゃあ、私と福良の間にあるのは何?友情?
その問いを考えながら仕事を進められるほど、私は器用ではなかった。
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作者名:シロ | 作成日時:2021年3月19日 2時