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陽香が帰った日、ずっと頭痛がするとは思っていたが、次の日起きると見事に発熱していた。
いつもの如く福良に連絡しようかと考えたが、あの困り顔が目に浮かんで連絡できなかった。
他の人に連絡しようかとも考えたが、負担になることだけは嫌で誰にも連絡しなかった。
1人で大丈夫だろうと思ったのだが、よりによって家にあった食料は陽香が家に来た日にほとんど食べてしまっていたので、ロクに食べられるものが無かった。
熱があるうちは食欲もなかったし、誰かにうつしてはいけないと家にあるものでなんとか過ごしていたが、熱が下がったのを確認して、コンビニに出ることにした。
まともに食べてなかったからか、時折ふらつきながらもコンビニに着くと、福良が入って来た。
気まずさよりも、私が体調を崩したことを心配している様子の福良の腕に捕まりながら、家に帰る道中、この状況で一番会いたくない人に、会ってしまった。
「Aちゃん？」
なんで、いるの。もう何年も会ってないのに、こんなところに。
「
「やっぱりAちゃんだ、久しぶりだね。」
また熱が上がってるのか。私が見ているのは幻覚なのだろうか。最近よく思い出していたから、ついに幻まで見るようになってしまったのか。
「Aちゃん、元気？」
「まあ、」
「そちらは…もしかして彼氏さん？」
「…」
「そっか！Aちゃんにも幸せにしてくれる人が現れたんだね、よかった！」
違う。これは現実だ。幻なんかじゃない。
私は確かに今、初恋の相手と再会して、話をしている。
今のこの状況で、初恋の相手に福良と恋人同士だと勘違いされるとは。
もう何を言ったら良いか、分からなかった。
「私、あれから心配してたの。Aちゃんどうしてるかなって。でも、素敵な人に見つけてもらったんだね」
何を言っているんだ。私は福良に見つけられてなんかいない。
ずっと茉緒に会いたかった。会いたかったけど、会いたくなかった。
次に会う時は私は誰かを幸せにしていて、自分も幸せになっているはずだったのに。
「茉緒？行くよ」
「あ、うん。ごめん、私行くね。またね、Aちゃん」
「うん」
あれは、茉緒の恋人。茉緒を私から奪った男。
あれからずっと一緒にいるんだ。きっと、茉緒はあいつにちゃんと幸せにしてもらっているのだろう。
仲睦まじく手を繋いで去っていく2人の後ろ姿を私はただ目で追っていた。
「東郷、帰ろう」
福良が私の手をとった。
その温かい手で、私の冷え切った手を包んだ。
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作者名：シロ | 作成日時：2021年3月19日 2時
