26 ページ27
その夜の寝つきは最悪だった。
福良のあの顔がまぶたの裏に焼き付いて消えなかった。
それでもしばらく目を瞑っていればいつの間にか眠りに落ちていて、次に目を開けるともうカーテンの隙間から光がさしていた。
「おはよう」
「ん、おはよ」
「朝ごはん勝手に作っちゃったけど、食べる?」
寝不足からか、二日酔いからか、ズキズキと痛むこめかみを抑えながらリビングに出ると陽香がキッチンに立っていた。
陽香も陽香であまりよく眠れなかったのか、目の下に隈ができていた。
「ありがとう、食べる」
用意されたご飯に味噌汁に卵焼きやらを見て、たまには誰かと一緒に朝食をとるのもいいものだと思った。
「お姉ちゃん、昨日のことだけど」
「気にしなくていいって」
風呂から出た後も、酔いと罪悪感でぐちゃぐちゃになりながらごめんと繰り返す陽香を慰めながら寝かしつけたのだが、いまだに引きずっているらしい。
例えこれから先、福良と気まずくなろうが、友達でいられなくなろうが、それは私たちの問題であって陽香は何も悪くない。
「私のせいで福良さんとお姉ちゃんが気まずくなるのは嫌。お姉ちゃんのことだから、無かったことにしようとしてるかもしれないけど、福良さんのためにもちゃんと話し合って」
確かに、知りませんでした、気づきませんでしたで押し通せば何とかなるって思ってた。
だが、妹にこう言われてしまっては、私は一体どうするのが正解なのか、わからなくなる。
「福良のため?」
「福良さんの話、ちゃんと聞いてあげて欲しい。そこから先、どうするかはお姉ちゃん次第だけど」
「…わかった」
153人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:シロ | 作成日時:2021年3月19日 2時