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「そういえば、山本さんの記事読みました。」
私はかちゃかちゃと機材を片付けながら山本さんをちらと見やった。
スマホを覗き込んでいた山本さんは私の声に顔を上げると私の目を真っ直ぐ見て、嬉しそうに笑った。
「本当？ありがとう。」
「私も陸上やっていたので、陸上の記事が面白かったです」
「陸上やってたの？」
「はい、長距離を。」
「長距離？1500とか？」
「3000です」
うわ、と顔をしかめる山本さんが可笑しくて思わず顔が綻んだ。
山本さんの表情が段々柔らかくなってきていることも嬉しかった。
「僕も一回5000に出たことあるけど、あれ本当きついよね」
「もう走れないなーって思います」
「分かる。着実に歳を感じてる」
確かに、と二人で笑い合っていると、ガチャリと扉が開いた。
「盛り上がってるねえ」
虫さんがスマホ片手に部屋に入ってきた。
手を動かしながら虫さんを見上げる。
「虫さん待ちですよ」
「お待たせしました〜」
悪びれない虫さんにわざとらしくため息をつくと、山本さんがはははっと笑う。
やっぱりまだ緊張しているのだろうか。どことなくその笑いがぎこちなく見えた。
「じゃ、問題の確認と企画の段取りの確認しますか」
二人は真面目な顔で打ち合わせを始めた。
先ほどと打って変わって真剣な表情の山本さんに少し見惚れていたことは自分だけの秘密にしておく。
「じゃ、本番お願いします」
2人の打ち合わせが終わるのを見計らって、山本さん、と声をかけると、キレの良い返事が返って来た。
「もしよかったら連絡先交換しませんか」
自分にしては思い切った行動だと思う。
隣にいるけれど何も言わない虫さんには後で存分にいじられるのだろう。
「あ、もちろん」
正直断られることも覚悟していたので、あまりの快諾にこちらが拍子抜けしそうになった。
無事に連絡先を交換すると、山本さんはこちらを真っ直ぐ見て嬉しそうに笑った。
その笑顔を見た瞬間、私はもうこの人だって思った。
その時すでに仲良くなりたいだけじゃない、その先に進みたいって、思っていた。
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シロ(プロフ) - 夢小説大好きおばけさん» はじめまして。コメントありがとうございます！そう言っていただけて嬉しいです…その後、いつかどこかで公開します:) (2021年3月3日 16時) (
レス) id: 40ccbc89c0 (このIDを非表示/違反報告)
夢小説大好きおばけ(プロフ) - 初めまして、どの話も本当に素晴らしかったです。言葉選びが優しくて、特にKochanのエピソードが思い出話含め一番好きでした……！いつかその後を拝読できる日が来ることを願っています。 (2021年3月3日 15時) (レス) id: a1cfe06fe2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：シロ | 作成日時：2020年12月24日 12時
