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先程転がった時にウエアの中に入ってしまった雪をなんとか掻き出して、再び立ち上がる。
さっきの彼女みたいにはいかないが、なかなかスムーズに滑ることができるようになったと思う。
一番下まで降りると、のろのろと板を外し、リフト乗り場へ向かう。
数名が並んでいるリフト待ちの列の一番後ろにつき、自分の番を待っていると、誰かが自分の隣に立った。
見れば、先ほどの女性ボーダー。軽く会釈すると、会釈を返してくれる彼女。
「先ほどは、ありがとうございました」
声をかけるか迷い、結局リフトに乗り込んだ後、お礼だけでもと声をかけた。
すると彼女はゴーグルをヘルメットにあげながら、こちらを向いて笑った。
「大丈夫でしたか？」
「いやあ、なんとか」
「結構転がったでしょう」
「派手に行ったと思います」
ははは、と笑うのに合わせて笑ってくれる彼女。
初めて直で見る彼女の目は綺麗で、悪戯っぽく光っていた。彼女のパーソナリティに素手で触れた感覚に心臓が跳ねる。
「ボード、上手ですね…」
「ありがとうございます」
「結構来られるんですか」
「そうですね。ほぼ毎週」
少しはにかんだような表情で笑う彼女を見た瞬間、思考が飛んだ。何か話題を、と思うほど何を話せばいいのかわからずただただ彼女の方を見て顔を引きつらせることしかできない。どうしようか、思考をフル回転させてると、彼女が口を開いた。
「あの、お節介かもしれないですけれど」
そう前置きして彼女が話し出したのは、どうしたらうまく滑れるようになるか、と言う話だった。
俺のことを知ってか知らないでか、彼女の話は論理的で整理されていて理解しやすかった。
「きっと、大人の方は頭で理解するのが先だと思うので、今のことを頭に入れておくと、上達も早いと思います」
「うわ、勉強になります。ありがとうございます。何か、お仕事とか、されてるんですか？」
「去年まで指導員として仕事してたんです」
「なるほど、それは上手なわけですね」
ありがとうございます、と軽く頭を下げた彼女。
再び彼女との間に流れる沈黙。この時俺は、頭の中で彼女に連絡先を聞くか、考えていた。
普段だったらこんなことは思わないのだが、なぜか彼女には今聞かないと後で後悔すると思った。
しかし思ったところで行動に移せるかどうかは別問題。結局そのあとは一言も声を発せずにリフト降り場に着いてしまった。
「じゃあ、頑張ってください」
「ありがとうございます」
それだけを交わして、彼女は再び銀世界へと消えて行った。
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シロ(プロフ) - 夢小説大好きおばけさん» はじめまして。コメントありがとうございます！そう言っていただけて嬉しいです…その後、いつかどこかで公開します:) (2021年3月3日 16時) (
レス) id: 40ccbc89c0 (このIDを非表示/違反報告)
夢小説大好きおばけ(プロフ) - 初めまして、どの話も本当に素晴らしかったです。言葉選びが優しくて、特にKochanのエピソードが思い出話含め一番好きでした……！いつかその後を拝読できる日が来ることを願っています。 (2021年3月3日 15時) (レス) id: a1cfe06fe2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：シロ | 作成日時：2020年12月24日 12時
