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もう何時間経っただろうか。
いや、ほんの数十分だっただろうか。
活字に集中していた僕は目の前にコーヒーが置かれたことにも気づかなかった。
我に返ったのは、きんと甲高い声が脳天に響いたからだ。
なんだ、と視線をあげると、女子高生4人が僕と彼女の間にある2人掛けの席をくっつけて談笑していた。
おしゃべりに花が咲いて思わず声が大きくなってしまったのだろうか。
きゃっきゃっと耳を抜ける笑い声はこの空間にはあまりにも不釣り合いだった。
当の彼女たちは思い出話だか、恋愛話だかで盛り上がっていて、周りの様子は気にしていないようだった。
しかし隣に座る僕はどうしても気になってしまう。
もちろんおしゃべり自体がダメだというわけではないのだが、少し音量が大きのではないかと感じ始め、いよいよ注意しようかと考えあぐねていたその時。
女子高生を挟んで反対側に座る彼女が、口を開いた。
「すみません、お楽しみのところ申し訳ないのですが、もう少しだけ、ボリュームを下げていただけますと幸いです」
決して大きくはないが透き通るような声に物腰柔らかい言い回し。
それが僕が初めて聞いた彼女の声だった。
注意された女子高生たちは、心底申し訳なさそうに、すみません、と素直に謝っている。
どうやら本当にただおしゃべりの度が過ぎてしまっただけらしかった。
赤の他人を注意することは本当に気力が必要だと思う。
それをさらっとやってのけた彼女に純粋に感心してしまった。
彼女の方を見やると、こちらに視線を向けた彼女と目があった。
すると彼女は拳で口元を隠しながら照れ笑いを見せた。
会釈以外の笑顔を見るのもそれが初めてだった。
初めて聞いた彼女の声に、初めて見た彼女の笑顔に、初めて垣間見えた彼女の人柄に、それだけで当時の僕が彼女に惹かれるには十分だった。
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シロ(プロフ) - 夢小説大好きおばけさん» はじめまして。コメントありがとうございます！そう言っていただけて嬉しいです…その後、いつかどこかで公開します:) (2021年3月3日 16時) (
レス) id: 40ccbc89c0 (このIDを非表示/違反報告)
夢小説大好きおばけ(プロフ) - 初めまして、どの話も本当に素晴らしかったです。言葉選びが優しくて、特にKochanのエピソードが思い出話含め一番好きでした……！いつかその後を拝読できる日が来ることを願っています。 (2021年3月3日 15時) (レス) id: a1cfe06fe2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：シロ | 作成日時：2020年12月24日 12時
