提案したい子 #izw ページ6
「拓司さん、拓司さん」
「どうした」
「今いいですか」
「ん?」
やけに丁寧な彼女に作業していた手を一度止める。
俺が座っていたソファにちょこんと正座する彼女。
「私たち付き合ってそろそろ2年半ですよね」
「そうだね」
「最近は拓司さんの仕事も忙しくなってきてますよね」
「うん、そうね」
「会うのもどっちかの家が多いですよね」
「そう、だね」
あんまりにも真剣な顔の彼女に、最悪の展開を少しだけ覚悟する。
確かに最近は仕事が忙しくて会う時もどちらかの家とAは言ったがAがうちに来てくれることがほとんどだ。
愛想が尽きてしまった、と言われるかもしれない。
「そこで提案なんですが、そろそろ同じ家に住むって、どうですか」
一瞬何のことだか理解できなくて思考が止まる。
「え」
「いや、一緒に住めばね、私が家にいる時間は掃除とか洗濯もできるし、わざわざ行ったり来たりしなくても済むし、それに一緒にいられる時間が増えるし…」
早口に捲し立てながらも尻すぼみになる彼女。
「はぁぁぁぁ、」
思わず安堵のため息が漏れる。
すると彼女は俺が呆れてると思ったのか、びくりと肩を震わせて俯いてしまった。
「ダメ、かな…」
「いや、ごめん。ダメじゃない。正直フラれるかもと思ってたから安心しただけ。」
すると彼女はぱっと顔を上げた。
まだその眉毛はハの字に下がってしまっているが。
「一緒に住もっか」
「えっ、いいの…」
「まあ、いつかは一緒に住むことになるだろうし、その時のための予行演習と思えば」
「拓司すき!」
そのまま俺に抱きついてきたA。
今の、プロポーズもどきのつもりだったんだけどな。
そういうところが鈍いのもAらしい。
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作者名:シロ | 作成日時:2020年11月11日 13時