不安な子 #fkr ページ25
「拳くんは、私のどこが好きなの?」
私の彼氏はなかなかハイスペックだと思う。
彼は言わずもがなの高学歴で、仕事もできる。温厚で人あたりがよく、コミュニケーション能力も高い。長身で細身だが肩幅はしっかりしていて男らしいところもある。
そんな彼と紆余曲折あって付き合い始めて今に至るわけだが、時折不安になることがある。
私ばかり彼のことが好きで、彼は私のことをちゃんと好きでいてくれているのだろうか。
特別可愛いわけでも、スタイルが良いわけでも、勉強ができるわけでもない、平凡な私をどうして彼が好きになってくれたのか。
悩みに悩んだ結果、本人に訊くのが一番だと、冒頭に戻る。
「どうしたの急に」
「いいから答えて」
「えー…好きなとこか……わかんないな…」
わからない?彼女の好きなところ、わからないの?もしかして、拳くんに愛されてるって自惚れだった?
予想外の返答にショックで言葉が出ない。
「え、どうしたのどうしたの」
急に黙り込んだ私を不審に思ったのか慌て出す彼。
こちらへ歩いてきて、正面に座り込んだ。
「A?どうしたの」
下を向いたまま顔を上げることができない私と、その前で不安そうに座っている彼。
「拳くんは、私のことあんまり好きじゃなかった…?」
「え、どうして」
「私の好きなとこ、わからないんでしょ」
顔を上げると呆気に取られている彼と目が合う。
彼は数回瞬きをすると、そうじゃなくて、と笑い始めた。
「Aのことはすごく好きだよ。でも、どこがって聞かれるとわかんないんだよ」
彼の言っていることが理解できない。私は彼のことが好きで、彼の好きなところは無限に挙げられるのに。
「じゃあさ、例えば俺がAの顔が好きって言ったとしよう。そうしたらなんらかの事が起きてAの顔が変わっちゃったら、俺はもうAのことが好きじゃなくなるってことになる」
彼の手が私の手を包んだ。
「俺はAのことが好きだから、どこが好きとかないよ。だから、Aに何があっても、AがAである限り俺はずっと好きだと思う」
私の手を両手で握りなおすと、私の目を見て微笑んだ。
「きっとAが思ってるよりも、俺はAのこと好きだよ」
ギュッと力を込められた掌。そのまっすぐな瞳に捉えられれば、不安だった気持ちがすっと消えていった。
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作者名:シロ | 作成日時:2020年11月11日 13時