捕まえて欲しい子 #fkr ページ16
「はい、これあげる」
「ん?」
彼女が帰宅するや否や差し出された可愛いプレゼント。
今日はなんかの日だったか。
カレンダーを見上げるもそこには何も書かれていない。
「開けてみて」
開けると中には手袋が入っていた。
「手袋?」
ネイビーの細身の手袋。
確かにそろそろ寒くなる季節だ。
「つけてみて」
彼女は目を輝かせながら俺の方を見ている。
促されるままに指を入れるとぴったりだった。
「ぴったりだね、良かった」
手袋をはめた俺の手を触りながら満足そうな彼女。
「今日なんかの日だっけ」
「ん?何の日でもないよ?」
手袋を触りながら答える彼女。
「ただ、買い物してたら見かけて似合いそうだなーと思って。サイズもちゃんと選んだんだよ」
「サイズ?どうやって?」
「こうやって、自分で繋いでみて」
もう片方の手袋と自分の手を絡めながら指の場所を確認している。
その確認の仕方は可愛いくないか。
当の本人はいい方法でしょ、と自慢げ気だ。
可愛いこと言ってるという自覚はないのだ。そんなところも可愛いのだが。
「寒くなったらつけるね。ありがと」
どういたしまして、と嬉しそうに笑う彼女。
そういえば手袋をプレゼントする意味、どこかで読んだことあったな。何だったかな。
それを思い出していると思わず口の端が上がった。
「ねえ、A。手袋をあげる意味って何だか知ってる?」
「え?」
キョトンと固まる彼女の腰に腕を回して自分の方に引き寄せる。
そのまま耳元に唇を寄せ、小さく呟いた。
「”私を捕まえて”」
それは信憑性のないことだとも書いてあったけれど、そんな嘘で幸せな気分になるならそれもいいかなと思ったり。
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作者名:シロ | 作成日時:2020年11月11日 13時