２５ ページ25
「お疲れ様でした〜」
勤務を終えて、ジムを後にする。
結局今日は業務が立て込んでいて、気付いたら須貝さんはもう帰宅していた。
今日は件の先輩と同じタイミングで上がりだったので、肩を並べて駅の方へ歩く。
「で？やっぱりあの会員さんが好きなんでしょ？」
覚えていたか。
2人きりでは逃れられまいと観念して先輩の会話に付き合うことにする。
「好きとか、よくわからないので」
「そうなの？」
それは本音だ。
前の彼氏は色々あって付き合ってすぐに気持ちが冷めてしまい、すぐに別れた。
その後も恋人がまともにできたことがなく、ここまできてしまった。
「Aちゃんはあの人と一緒にいると楽しい？」
「はい」
「幸せだなって思う？」
「幸せ…？」
「じゃあ、明日もその次の日も会いたいし、できるだけ長く一緒にいたいと思う？」
「…はい」
須貝さんと一緒にいるのは楽しい。
目を合わせて笑い合っている時間がずっと続けばいいのにと思う。
つまり、そういうこと？
「つまり、そういうことじゃない？」
先輩は私の心を見透かすかの様に笑った。
私は、須貝さんのことが好き？彼の恋人になりたいと思ってる？
「脈ありだと思うよ、俺は。」
駅までは徒歩で数分。あっという間に改札が見えてきた。
先輩は、じゃあここで、と言って半ば放心状態の私を置いて改札をくぐって行った。
私は、須貝さんのことが好きなんだ。
その瞬間、私は自分で引いた線を確かに踏み越えた。
今までは何重にも引いた予防線を、なるべく越えないように、自分の本当の気持ちに気づかないようにそうっとその線の内側を歩いていたんだろう。
須貝さんに名前を呼ばれた時も、抱きしめられた時も、指を絡められた時も。
その内側で必死に耐えながら、ポーカーフェイスつくっていたんだ。
ギリギリ線の内側を歩いていたところを、内側から誰かに、いや、先輩に名一杯押されてバランスを崩した。
でも転ばなかった。だって、向こう側に倒れる準備をしていたから。
私は須貝さんのことが好きだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 344人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆきんこ(プロフ) - こんばんは。コメント失礼します！ こちらの作品最っ高で読みながらニコニコしてました！ 完結おめでとうございます！！ (2022年6月3日 21時) (
レス) id: 83dccc5424 (このIDを非表示/違反報告)
シロ(プロフ) - りみさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます！力になります！ (2021年1月15日 15時) (レス) id: 40ccbc89c0 (このIDを非表示/違反報告)
りみ(プロフ) - 毎回ドキドキしながら読んでおります^^*次回の更新も楽しみです！ (2021年1月15日 2時) (レス) id: 8d6821c78b (このIDを非表示/違反報告)
シロ(プロフ) - 緋歌梨さん» ご指摘ありがとうございます！修正いたしました。誤字が多く読みづらくて申し訳ないです… (2021年1月6日 12時) (レス) id: 40ccbc89c0 (このIDを非表示/違反報告)
緋歌梨(プロフ) - コメント失礼します！4ページ目“振れられる”じゃなくて､“触れられる”じゃないですか？ (2021年1月6日 11時) (レス) id: ef32365840 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：シロ | 作成日時：2020年11月22日 1時
