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店に入ると平日だからか人は多くなく、通された席に向かい合って座る私と須貝さん。
こうして向かい合ってみると、意外と真正面から同じ目線の高さで顔を合わせるのって初めてかも。
普段ジムで会う時は立ってるからほとんど見上げてるし、この前家にお邪魔した時も斜め前に座ってたし。
「腹減ったわ」
メニューを手に取りながらなんとなく須貝さんの方を伺うと、真剣にメニューを見ている須貝さんがいた。
まさかジムのお客さんと一緒に食事するようになるとはなあ。
「決まった?」
しみじみと須貝さんの方を見ていると不意に声をかけられ動揺する私。
「あ、えっと、これで…」
「オッケー」
そう言って須貝さんは店員さんを呼ぶとスマートに私の分まで注文してくれる須貝さん。
注文を終えると、店員さんにお願いしまーす、と声をかけ、水を一口飲んだ。
「今日はちゃんと呼んでくれたんだね」
そう言った須貝さんの口角はあがっていたが、目は真剣だった。
その目に、もし須貝さんが来てくれなかったら、と考えて鳥肌がたった。
「いつもごめんなさい」
「なんで謝るの。今日はこうしてAちゃんと食事までできて一石二鳥じゃん」
また、そんなこと言って。
私がとんでもない勘違い女だったらどうしてたんだ。
「そういえば、課題終わったの?」
「終わりましたよ」
「おお、偉いじゃん。」
「まあ、私優秀なので。」
「…」
「なんで黙るんですか!」
軽い会話のやりとりに、気が楽になっていくのがわかる。
物理的にも、精神的に私は須貝さんに助けられている。
ありがたいことだと感謝すると同時に、もし彼に頼れなくなったらどうしようという不安も押し寄せてくる。
今まではたまたまタイミングが良かっただけだ。こんなことを繰り返していたらそのうち呆れられて突き放されるかもしれない。
彼だって人気者なのだから、いつまでも私が甘えていて良いわけがない。
自分の中のモヤモヤがだんだんと大きくなっていくのがわかる。
私の不安を他所に須貝さんは運ばれて来た料理を前に待ち切れないとばかりに食べる準備をしている。
「うまそうじゃん」
「本当に美味しそう」
「早く食べよ」
考え事は後でにしようと今はこの食事を楽しむことにした。
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ゆきんこ(プロフ) - こんばんは。コメント失礼します! こちらの作品最っ高で読みながらニコニコしてました! 完結おめでとうございます!! (2022年6月3日 21時) (レス) id: 83dccc5424 (このIDを非表示/違反報告)
シロ(プロフ) - りみさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます!力になります! (2021年1月15日 15時) (レス) id: 40ccbc89c0 (このIDを非表示/違反報告)
りみ(プロフ) - 毎回ドキドキしながら読んでおります^^*次回の更新も楽しみです! (2021年1月15日 2時) (レス) id: 8d6821c78b (このIDを非表示/違反報告)
シロ(プロフ) - 緋歌梨さん» ご指摘ありがとうございます!修正いたしました。誤字が多く読みづらくて申し訳ないです… (2021年1月6日 12時) (レス) id: 40ccbc89c0 (このIDを非表示/違反報告)
緋歌梨(プロフ) - コメント失礼します!4ページ目“振れられる”じゃなくて、“触れられる”じゃないですか? (2021年1月6日 11時) (レス) id: ef32365840 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:シロ | 作成日時:2020年11月22日 1時