34話 ページ36
アズールくんの座ってるソファの後ろに立ち、話を聞く。
｢それで？僕に相談というのは？｣
監督生の相談というのは、もちろん、イソギンチャクたちの解放。
そうするようにしたのも僕達だしね。
｢はっはっは、これはまた……突然横暴なことを仰いますね。僕と契約した生徒、225人の解放ですって？｣
｢225人！？そんなに契約してやがったのか。｣
人数聞いて僕も驚いた。
225人。それだけの人数と契約しているということは、アズールくんはユニーク魔法をそれだけ使っているということになる。
ますます、アズールくんのことが心配になってきた。
｢今年はジェイドとフロイド。それに、優秀なAが精力的に営業活動をしてくれましてねぇ……おかげさまで、たくさんのお客様と取引させていただきました。｣
確かに頑張って宣伝したけれど…
アズールくんの身体のこと、もっとちゃんと考えるべきだったかな。
｢さて、監督生さん。あなたは生徒たちを自由にして欲しいと言いますが、僕は彼らに不当な労働をさせているわけではありません。彼らは契約書の内容に合意し、僕と契約を交わした。｣
そう、イソギンチャクらは契約書の内容に合意した上で、アズールくんのテスト対策ノートを得たのだ。
テスト勉強が楽になったんだし、50位以内に入るのだって正直満点取れれば入れたわけだしね。
可哀想とか、そんなので契約破棄できるなら、契約書なんて意味が無いもの。
｢契約は可哀想だとか、そんな感情的な理由で他人が口を挟めるものじゃあないんですよ。つまり、一昨日お越しください……ということです。｣
そう言うアズールくんに対して、監督生は取引をしたいと申し出た。
もちろんこれも、アズールくんの計算通り。
獣耳の大男は驚いていたけれど、監督生は本気の眼差しでアズールくんを見つめていた。
｢ほう、僕と取引したいと？面白いことを仰る。｣
｢あはっ。小エビちゃん、度胸あるじゃん。｣
フロイドくんも楽しそうで何より。
アズールくんのシナリオ通りに話は進んでいく。
｢……ふぅむ。あなたが僕と取引したいのはわかりましたが……しかし困りましたねぇ。確かあなたは魔法の力をお持ちでない。美しい声もなく、一国の跡継ぎというわけでもない。ほんとうにごく普通の人間だ。それだけ大きなものを望むのでしたら相応の担保が必要です。｣
｢担保、だと？｣
｢たとえば……あなたが管理しているオンボロ寮の使用権、とか？｣
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作者名：雨鯱 | 作成日時：2020年8月29日 21時
