101 ページ2
「いた‥！」
やっと委員長の後ろ姿を確実に捉える。見失わないように必死に追いかけているうちに、いつの間にか人気のない所まで来ていた。そして今、彼女は何やら空き教室の前でうろうろしている。
何してるんだろう‥？
こっそり背後に近づき、肩を叩く。
「ひゃっ！」
何とも可愛らしい声をあげて委員長はすごい勢いで振り返った。
「委員長、こんなこんな所で何してるの？」
「お、沖田さん」
少し声が震えている。
「委員長、早くいかな「今外から声がしなかった？」」
突然空き教室の中から女子の声が聞こえた。焦りの表情を浮かべた委員長を見て、理由は分からずとも見つかっていけない事は理解できた。
「こっち来て」
委員長の腕を掴んで掃除ロッカーの陰に身を隠す。私を見つめて不安げに揺れる瞳。口の前に人差し指を立てれば、彼女は小さく頷いた。
その直後ガチャリと音がして、人の気配がする。
「気のせいだったのかな」
「‥おい、用がねえならもういいか」
女子の後に聞こえた低い声。聞き覚えのある声だった。
「待って‥！」
バタンと扉が閉まる音がする。顔を覗かせ誰もいない事を確認し、委員長を腕の中から解放する。
「‥何してたの、委員長」
「何でもないのよ。ただ、気になる事があって‥でも気にする事ないわ」
「‥そう？あ、委員長。皆が待ってる」
「え？あ‥！もうこんな時間！」
「迎えに来た。行こう」
「わざわざありがとう。委員長失格ね、ごめんなさい」
複雑そうな顔をした委員長が走り出す。劇より大事な事でもあったのか。不思議に思ったけれどそれ以上は詮索せず、走り出した委員長の後を追う。
そして例の空き教室の前を通った時に教室の窓から見えた光景。頬を染めた女の子の口が何やら動き、目の前の男子へ手を差し出している。しかしその相手は一切反応しなかった。そしてその相手の男子が、キヨに見えた事に私は動揺を隠せなかった。
「あと10分‥ギリギリ間に合う‥かしら」
息を切らして委員長が呟く。
「大丈夫だと、思う、よ」
私の返事も途切れ途切れだ。
「沖田、さん」
隣を走る委員長の視線が私を射抜く。
「何も気にしちゃ‥ダメよ」
凛としたその声に全てを察する。あの男子は間違いなくキヨだったんだ。
「大丈夫、気にして、ない」
「なら‥いいの‥だけど」
そう言った委員長の視線が窓へ向いた瞬間、彼女の足が止まった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 287人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
蒼乃(プロフ) - すずさん» すずさん。大変遅くなり、申し訳ありません。温かいお言葉に感謝しかありません。ありがとうございます。再び少しずつですが進めていこうと思っております。すずさんがもしまだ待っていてくださるようでしたら、よろしくお願い申し上げます。 (2020年4月2日 2時) (
レス) id: 386e426ab5 (このIDを非表示/違反報告)
蒼乃(プロフ) - 粉ミルクさん» お待たせして申し訳ありません。少しずつ進めていきます。よろしくお願い致します。 (2020年4月2日 2時) (レス) id: 386e426ab5 (このIDを非表示/違反報告)
すず - あけましておめでとうございます(((o(*ﾟ▽ﾟ*)o)))今年も蒼乃さんの作品を楽しみに頑張っていきたいと思います。いつまででも待ってますので、蒼乃さんの生活を1番に、頑張ってください！ (2019年1月5日 17時) (レス) id: 83e4d62dc4 (このIDを非表示/違反報告)
粉ミルク(プロフ) - もう更新されないのですか、？ (2018年11月30日 23時) (レス) id: 5f970e9169 (このIDを非表示/違反報告)
すず(プロフ) - 更新ありがとうございます(*´ω`*)いつもながら描写がわかり易いので、自然に映像が脳内再生されます。とても楽しい...！今までもこれからもファンです！楽しみに待ってます。 (2018年6月24日 17時) (レス) id: 0ccf87f045 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：蒼乃 | 作成日時：2017年7月12日 3時
