198話 「祝福」 ページ48
高校一年の秋。
意外なことにも、二人の交際を一番最初に知ったのは、二人の良きライバルである浅野学秀だった。
浅野「二人は付き合ってるのか？」
業「まぁね」
たまたま二人でデートしているところに、浅野が居た。
ガッツリ手を繋いでいるところを見られ、誤魔化せないと悟った業が認めると、Aは帽子を深く被る。
浅野「彼らは知っているのか？」
業「俺らは言ってないよ。気づいてたら別だけど」
浅野「……まぁ、五十山田の性格を見るとそれもそうか」
浅野は一人納得すると、黙り込んでいるAを見て微笑む。
浅野「五十山田、」
A「……なんですか」
浅野「よかったな」
その一言に、たくさんの思いが詰まっていた。
浅野は父親からAの過去をざっくり聞いていて、自分で調べた。
本人はきっとあの時のことを一生気にする。
それでも、あれは周りが良くなかったと浅野は思う。
小学生にできることは限られている。
周りが頼れないことも、浅野は知っている。
だからこそ、Aがようやく自分の幸せを掴もうとしていることが嬉しく思う。
別にAを異性として認めているとか、そういう訳じゃない。
ただ、級友として、同じ会長同士として気にかけていたのは事実だ。
いつも危なげだったA。
誰よりも自分を信じていなかったAは、諦めたように風紀委員会を率いていた。
本人はよく口にしていた。
話すことも、自分で判断を下すことも苦手だと。
そんな自分が率いても良いのかと、一度だけ浅野の前で涙を流したことがある。
ちょうど、業に停学処分が言い渡された日だった。
ずっと、完璧であろうとしていた彼女の涙を見たのは、その日が初めてだった。
精神安定剤のような存在だった業が学校から居なくなったことが不安だったのだろう。
人間なのだからそれは当然だ。
浅野はそう感じ、ただ静かに涙を流すAの背中を擦ることしかできなかった。
A「……浅野さんには、心配かけたと思う。あの時」
浅野「……」
A「相変わらず私は、話すのも、判断を下すのも、誰かの上に立つのも苦手。
だけど、前を向いていけるようになった」
浅野「そうか」
A「……浅野さん、ありがとう。
あなたと出会えて、本当によかった」
Aはとても優しく笑った。
その表情を見た浅野は、あぁ、と頷くとその場を離れた。
浅野「良かったな、五十山田」
浅野はしみじみ思う。
彼女の幸せを願って。
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お - えまって？！最高すぎません？！この物語は主人公である夢主ちゃんが書いた本当のお話…ってコト？！ (12月19日 1時) (
レス) @page50 id: 0af6726044 (このIDを非表示/違反報告)
本好き(プロフ) - 暗殺教室に再熱し、勢いで2日で読みきってしまいました。あたたかい、素敵な物語をありがとうございました。少しでもこの物語が多くの人の心に届きますように。 (12月2日 19時) (レス) id: 860fd688d9 (このIDを非表示/違反報告)
霞 - 思って今よりもずっとこの作品に引き込まれました。主人公の過去はかなり辛くて後半は大半泣いてしまいました。業くんとの関係性もとても良かったです。原作に沿うように書くのは大変だったかと思いますが、本当にとても良い作品でした！本屋で売れるぐらい良かったです (2023年1月17日 21時) (レス) @page50 id: a9816fab8f (このIDを非表示/違反報告)
本屋と図書館とガソリンスタンドの匂いが好き(プロフ) - この作品に出会えて本当に良かったです。主人公の過去は想像以上に辛いもので涙なしでは読めませんでした。そして業との関係がとても好きです。2人が、いや4人が末長く幸せに生きていけるように願います。本当にありがとうございました！ (2023年1月13日 1時) (レス) id: b9b005fe2b (このIDを非表示/違反報告)
ゆめ - 本当凄い。無料で見るのが勿体無いくらいすごい。一冊の本を見てる気分でした！！！素敵な作品を作ってくださりありがとうございます (2023年1月8日 22時) (レス) @page50 id: 963d301a2a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：塩こんぶ | 作成日時：2022年12月17日 12時
