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Aは人前に立つのが嫌だと、
あの後教えてくれた。
もう何があるか分からないから怖い。
涙を流すことは無いけど、
声を震わせながらそう伝えてくれた。
今日はライブで、ツアーの初日だけど、
Aはずっと舞台袖からゲネプロに励んでる俺らを見守ってた。
リハーサルまではしっかりやれてたけど、
会場に着いた途端、顔色が悪くなっていってて。
海青「Aさん、一緒に手繋いで登ろう?」
慎「ほら、両方からなら怖くないっすよ」
海青と慎がAの気を引きながら登ろうとしてる。
緊張しながらもAはゆっくり登壇して。
北人「人が居ない状態でコレか」
陸「人が居る状態でどうなるか、
ってのはあるよねやっぱ」
俺も、北人も、陸さんも考えてる事は同じ。
人が居なくてこれだと、
人が居ると倍時間はかかるし、
それだけAへの負担も大きい。
こんな目に遭わせた人たちに腹が立ってくるけど、
守り切れなかった自分にも腹が立つ。
北人「壱馬、あんまり自分を追い詰めすぎないでね。
Aは、ちゃんと前に進めるから」
壱馬「おん」
俺はAの横に並んだ。
Aは緊張でそれどころじゃないっぽいけど。
壱馬「今度は絶対守るから。
だから、お前は俺らを盾にしろ」
『壱馬……』
壱馬「大丈夫、横には俺が居る。
周りにはみんなが居る。
俺らを信じてほしい」
マイクを通さないで俺らだけのやり取り。
きっと途中から二人だけの世界だった。
周りの音が聞こえなくて、
ただ自分の覚悟を決めてるAだけを見つめて。
『みんなが居たら、安心だね』
壱馬「ふっ」
まだフラッシュバックしたり、接触するイベントには恐怖がある。
それでも、俺らが横に居たら頑張れるから、
とAは笑いながら教えてくれた。
なら俺らはただ女王様を守るだけ。
それだけの話だ。
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作者名:雪乃 | 作成日時:2024年3月19日 15時