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Aは関係者に呼ばれて、
誰も居ない非常階段から突き飛ばされた。
それから落下して、踊り場で倒れてるところを
別のスタッフさんに発見された。
その時の仕事関係者を割り出して、
俺らは大体この人であろう目処をつけて、
今回の作戦に出た。
『なんで、こんなやり方で……』
壱馬「脳震盪とストレス両方だろうって、
山彰さんと俺が同じ意見やった。
だから、ショック療法。
俺らもAの件聞いてから、アレコレ調べてん」
『そっか……』
Aは口を押さえて、
後ろに座ったままの海青に抱きつき、少しだけ泣いた。
それから教えてくれた。
『起きた時、知らない人と知らない場所で戸惑って、
でも、初めてメンバーで来てくれたのが壱馬で、
でも当たってるか分かんなくて不安だった』
壱馬「……」
『話してる内にメンバーのこともちゃんと思い出せて、
ちぇいのことも思い出せたから、安心してたけど、
どうしてか、ノックの音が怖かった』
海青「……」
『二人が隣に居てくれる。
その時間と空間が、どれだけ心地いいか、
思い出したあの瞬間、ホッとした。
もう怖くないって』
壱馬「自分で気づけたんなら、俺らも良かったわ。
A、俺らのこと信じてくれてありがとうな」
『ん……』
海青「良かった、またこうして、話せて。
ホンマに良かったって、思ってるから」
誰も通らない非常階段で、海青とAの泣き声が響く。
俺はそんな二人をただ見ることしか出来なくて、
マナーモードに設定してあったスマホが震えたから
画面に目を向けると、
山彰さんからAを突き落としたスタッフの逮捕ができた、
って報告が来てて。
壱馬「あの人はもう逮捕された。
防犯カメラの映像も、あの時の関係者の記録も全部、
何もかもが合致したから」
『っ』
この事はAの強い希望で、公開することは無かった。
完全に記憶喪失が治ったかどうかは、
何も聞かんで欲しい。
でも、メンバーの顔や名前は何も忘れてなくて、
A自身も何も変わってなくて。
けど何らかの形が変わってたとしても、
俺らは全員口を揃えて言った。
「「どんな姿でも、俺らは俺ら」」
ただそれだけだった。
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作者名:雪乃 | 作成日時:2024年3月19日 15時