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誰かが通報したのか、
警察も駆けつけてきて。
ただ、私にナイフを突きつけたままという状態だから、
下手に手出しができない状態だった。
『っ……』
「ははっ、Aちゃん。
日本の警察は愚かだと思わないかい?」
『なにが』
「こうやって目の前で、人が刺されるのを見るしかない」
『っ……ゴホッ』
肺まで刺さってはないだろうけど、
喉が鉄の香りしてきたから、だいぶいってんな。
状況に慣れてきた私は、
一人冷静にそう思った。
運がいいのか悪いのか、
最近までハードなアクション系の撮影してたから、
何かとまだ体が覚えてる。
こうやって相手に馬乗りにされて、
その状況でも私は抜け出すっていう技を使った。
その時は手負いじゃないし、相手はスタントマンだったけど、
でもこいつはただの素人で変に頭のいい雑魚だ。
普段からダンスやらアクションやらで鍛えてるこっちと、
何もかものフィジカルが違うんだから。
『ごちゃごちゃ喋ってくれて、どうもありがとう』
「え?」
相手が油断した一瞬で、私は男の腕を掴んだまま、
男の首に足を巻き付けてそのまま起き上がった。
男の力が抜けたほんの一瞬の隙に、
自分の胸に刺さってたナイフを逆に男の顔に近づける。
『生憎、最近までこの系統の撮影してたんだ。
私のストーカーしてたなら、これくらい分かるよね?』
「これが本物の鈴本Aだ……。
僕はそんな君が大好きだよ」
スタッフさんや警察がその男を押さえてくれて、
私はようやく解放されたけど、決して軽傷じゃない。
呼吸の度に息が苦しくなるほど、胸の痛みが強くなってきて、
男から離れたそこで、傷口を押さえながら倒れ込んだ。
救急車が駆けつけてたおかげで、直ぐに搬送。
病院に着く直前で意識を失った私は、
そこから記憶が無い。
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作者名:雪乃 | 作成日時:2024年3月19日 15時