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*▽ ページ11









Aが自暴自棄になってるのはみんな分かりきってた。



怒りっぽくもなってるし、焦ってもいるし、
踊れないって宣告されて動揺しないはずが無い。



特にAは、ダンスがあったから繋がった仲。




酒とか薬とかに走るわけじゃないけど、
ご飯は食べようとしなかったりとか、眠らなかったりとか。




ダンス練習も参加はできなくても、見学しとけと、
スタッフから指示出されてもどこかボーッとしてて。







壱馬「A……」




『見とけって言われても、踊れないって言われてんのにさ、
私に一体何ができんだろうね』




北人「そんなの……」




『みんなには分かんないよ、踊れなくなった私の気持ちなんてさ』




海青「Aさん」




『言ってよ。
お前なんて要らない、早く消えろ、って。
もうさ、お荷物背負わなくて済むんだよ』







自嘲気味に告げたAに、我慢ができなくなった俺は、
Aの手を取った。







壱馬「ええ加減にせぇよ。
それ、AKIRAさんの前でも同じこと言えんのか」




『……踊れる鈴本Aが必要なのであって、
そうじゃない私は要らないじゃん』




壱馬「A」




『だってもう踊れないって言われたんだよ!?
その通りじゃん!!』







Aは俺の手を振りほどいて、
涙目で俺を睨んできた。




そしてそのまま立ち上がったと思えば
俺の胸ぐらを掴んできて。







『分かる?
今もずっと聞こえないの。何にも。
あんたが怒鳴ったとして、私がキレたとして、
他のメンバーが止めようとしたって、何にも聞こえないの!!

そんな状態で、踊れると思う!?』







聞こえないというのがどれだけ辛いのか。


たった一人という武器で、
俺と一緒にセンターでダブルエースとして
結成からたくさんの思いを抱えて走ってきたA。




だからこそ悔しい。


Aがどれだけ自分を押し殺してここまで突っ走って来たのか。


それを知ってるからこそ。







壱馬「俺は、耳が聞こえなくなったことなんてないし、
全部のAの気持ちを知るなんてできない。

でも俺は、Aを信じてる」




『っ』




壱馬「どんな崖っぷちからも、絶望的な状況からも、
全ての苦境を「楽しい」「最高」って
笑って跳ね返してきたAだけを、俺は信じてる」







ポロリ、またポロリと涙を流したA。


俺は声を上げて泣き出したAを抱きしめるしかできなかった。

*▽→←*▽



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作者名:雪乃 | 作成日時:2024年3月19日 15時

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