107話 「二人から見た潮田渚」 ページ7
業とAは電話をしながら渚の件について話していた。
業「で、どーだったの？」
A【向こうのお母さん、多分今夜辺りに何かすんじゃない？】
業「へー、初めて会ったのによく知ってるね」
A【あれはうちの親と同類よ】
二人は電話越しに三日月を見ていた。
Aの親。それは亡くなった方だろう。
A【きっと彼には、暗殺の才能がこのクラスで最もある。
だからこそ将来に悩んでいるんだろうけど、自分も一歩間違えたらそうなってた】
業「ふーん」
業は思うところがあるのでイチゴ煮オレを飲みながらAの話に耳を傾ける。
A【カルマ、前に言ってたよね。怖くないのが怖いって】
業「うん」
A【彼、結構化けるんじゃない？】
業「そうだね〜……」
Aは昨日のことを思い出していた。
あれは凄かったと思う。
A【きっと、人の波長を読むことに長けた理由は、あのお母さんだろうね】
業「逆によくグレなかったよ、俺ならグレてる」
A【既にグレてる気がするんだけど？】
業「俺自分から喧嘩は売らないもん」
A【可愛くない】
電話越しでため息を吐くA。
業はハハッと笑いながら、昨日の渚を思い出す。
業「けど、死神はそれ以上だった」
同時に前に巻き込まれたあの殺し屋も思い出す。
彼はそんな渚の波長を一気に歪ませた。
業「あの時よく気づいたよね」
A【嫌な予感がしてただけ。
あいつの心臓音嫌な音してたし】
業「相変わらずAの耳良いな」
幼い頃にあの環境で過ごしたAは、離れた人の心音も聴き逃さない聴力を持っている。
本人はかなり苦労して日々調整しているらしいが、あの時は緊張状態だった。
だからこそ、殺せんせーとのジジ抜きにも、賭けにも勝てるわけだが。
A【取り敢えず彼のことは明日になれば分かる】
業「そーだね〜。
じゃ、夜も遅いし寝よっか」
A【おやすみ】
業「おやすみA」
二人は電話を切って月を見上げた。
「「好きだよ」」
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作者名：塩こんぶ | 作成日時：2022年12月3日 11時
