133話 「信頼と絆」 ページ33
茅野が無事に目が覚めた。
彼女が言うには、最初は純粋な殺意が合ったらしい。
それでも殺せんせーと過ごしていく内に何か事情があるんじゃないかと思うようになった。
だがその頃には触手が思い留まらせてくれなかった。
彼女はそう語った。
茅野「馬鹿だよね。
みんなが純粋に暗殺を楽しんでいたのに、私だけ一年間、ただの復讐に費やしちゃった」
「「……」」
茅野を筆頭に重苦しい空気になった。
それを打破するように渚が動く。
渚「茅野、」
茅野「っ」
渚「茅野にこの髪型を教えてもらってからさ、僕は自分の長い髪を気にしなくて済むようになった」
茅野「……」
渚「茅野も言ってたけど、殺せんせーって名前、みんなが気に入って一年間使ってきた。
目的がなんだったとかどうでもいい。
茅野はこのクラスを一緒に作り上げてきた仲間なんだ。
どんなに一人で苦しんでたとしても、全部演技だったなんて言わせないよ、みんなと笑ったたくさんの日々が。
殺せんせーは、みんな揃ったら全部話すって約束してくれた。先生だって聖人じゃない。
良いことばかりしないのはみんな知ってる。でも聞こうよ、みんなで一緒に」
誰よりも茅野の隣に居た彼だからこそ、茅野の心に響く。
茅野は涙を流しながら頷いた。
茅野「うん、ありがとう。
もう演技止めていいんだ……」
そう言って泣き出した茅野をみんなが温かく見守る。
そんな中、Aだけは拳を握って立ち尽くしていた。
磯貝「殺せんせー、どんな過去でも真実なら俺らは受け入れます」
磯貝の言葉に殺せんせーはため息を吐きながら俯いた。
正直な話、彼らには話したくなかった。だが、それももうできない。
殺せんせー「できれば過去の話は最後までしたくなかった。
けれど、しなければいけませんね。君たちの信頼を、君たちとの絆を失いたくないですから」
風が吹く中、殺せんせーは話し出した。
殺せんせー「夏休みの南の島で烏間先生がイリーナ先生を好評しました。
優れた殺し屋ほど万に通じる。的を得た言葉だと思います。
先生はね、教師をするのはこのE組が初めてです。にも関わらずほぼ全教科を滞りなく皆さんに教えることができました。
それはなぜだと思いますか？」
業「っ！？」
竹林「まさか…」
A「……やっぱり」
殺せんせー「そう。
先生は、"死神"と呼ばれた殺し屋でした」
殺せんせーの正体。
それはAが時々思ってた答えと同じだった。
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作者名：塩こんぶ | 作成日時：2022年12月3日 11時
