128話 「大事な話(2)」 ページ28
母「全面的なサポートはするから、Aの好きなようにしなさい」
母はそう言って微笑んだ。
その時に業が口を開く。
業「Aのお母さんとあの人が姉妹だったんだよね？」
母「えぇ」
業「知ってたんじゃないの？
春樹に双子の兄弟が居たこと」
業の言葉に父と母の二人が目を見開いた。
Aもそれを考えていたようで俯いた。
母「そうね、二人とももう子供じゃないものね」
母は観念したように俯き、肩を震わせた。
業とAに見つめられながら静かに涙を流す母の肩を父が優しく撫でた。
父「そうだな、もう話してもいいかもな。
それに、カルマも居ることだし」
緊張した空気がリビング内に流れる。
Aは不安げに二人を見つめると、父は話し出した。
父「俺たちが初めて子供を抱えたのは16年前。Aを都内の病院で産んだのが初めてだった」
A「ちょっと待ってください、産んだって……」
父「検査をしたって良い。Aの実の親は俺たちだ」
父の口から信じられない言葉が放たれた。
その事実に業もAも目を見開いている。
母「言うのが遅くなってごめんなさいね、A」
A「……」
母「本当は、Aと離れたくなかったけど、妹に言われたのよ。
「14の時に腎臓を移植してやったのは誰だと思うの」って」
業「……」
母「それが原因で私の家は家庭崩壊を起こした。
ほら、だから会った事ないでしょう、あなたの祖父母に」
A「……うん」
母「私が白血病を患って、ただでさえお金が無かった家に負担をかけて、あの子を苦しめた。その負い目から私は、あなたと春樹と春斗をあの子に預けた」
A「私、春斗って言ってないし、春斗と暮らしたことなんて無いよ……」
母「私が三人に名前を付けたの。私は三人を一度も忘れたことなんてなかった」
涙を流しながら語る母に、Aは目を泳がせる。
業はショックからどうにか立ち直って、自分の中で整理し始めていた。
父「すまなかった」
Aは唇を噛み締めて込み上げてくるものを堪える。
その様子を見た業は三人に言う。
業「この話はまた今度にしましょう。これ以上話してもAもお母さんたちも良い話し合いはできないでしょうし」
父「あぁ」
業はAを立たせると、Aは顔を多いながら業に連れられて自室に戻って行った。
その背中を見た母も嗚咽を零しながら泣きじゃくった。
少しずつ、家庭にヒビが入る音がした。
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作者名：塩こんぶ | 作成日時：2022年12月3日 11時
