127話 「大事な話(1)」 ページ27
翌日、業が家にやって来た。
業「お邪魔します」
母「いらっしゃいカルマくん」
業「どうも」
業が靴を脱いで母に用意されたスリッパを履くと、Aがリビングから出てきた。
A「……今日はありがとう」
業「んーん」
三人がリビングに入ると、テレビの前には父が座って本を読んでいた。
母「お父さん、カルマくん来たわよ」
父「おぉ、いらっしゃいカルマくん、また大きくなったじゃないか」
業「成長期なので、まだ伸びると思います」
父「良い事だ」
父は笑い、業も笑った。
そのまま母がキッチンで夕食の準備を始めようとした時だった。
A「あの、二人に、大事な話があるんですけど……」
母「大事な話？」
母がAを見ると、真剣な目で母を見ていて、業も先ほどとは変わった雰囲気をまとっていた。
それを見た二人はリビングにある食卓テーブルに座り、業とAもそこに座った。
テレビも消して音がしない空間で、Aは緊張しながら話し出す。
A「結論から言って、私、弟が居ます」
母「A、春樹は」
A「春樹じゃない。もう一人の、弟」
父「……どういうことだ」
父の問いかけをきっかけに、検査結果を見せた。
A「椚ヶ丘にあるわかばパークっていう学童サービスがあって、不登校とかで学校に行けない子を受け入れる施設があるんです。
そこに学校の関係で約二週間お邪魔した際に、その子供に言われた言葉が、調べるきっかけでした」
母「その結果が、これ？」
A「勝手なことをしたって思ってます」
Aは震えを殺すように両太ももの下に両手を置いて検査結果のたった一枚の紙を見つめた。
A「今の生活に満足していないわけじゃない。
落ち着いて眠れる場所だって、温かいご飯だってお風呂だってあるし、学校にも問題なく行けてて、こうしてカルマとゆっくり過ごせてる。
それだけでも本当に、本当に幸せ」
母「A……」
A「けど、その子は誰を頼ればいいかもわからない中で頑張って生きようとしてくれてる。
その子ね、笑ったところがすごく春樹に似てるんです。だからこそ、他人だとしても姉として、お互いたった一人の肉親として支えてあげたいんです」
父「……」
Aは緊張から声が震えていたが、それでも感じる真っ直ぐな言葉。
両親はAの言葉を聞いて黙っていた。
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作者名：塩こんぶ | 作成日時：2022年12月3日 11時
