126話 「温もり」 ページ26
A「……私、まだ兄弟が生きてる」
声を震わせながらAが告げた。
業はAの前にしゃがみこんでAの震えている手を握りしめる。
業「あの子？」
業は思い当たる子がいた。
以前E組総出で世話になったわかばパークの子供の一人で、Aと瞳の色と顔立ちが似ている男の子。
なんなら記憶の中に居る弟のような子供に凄くそっくりな男の子。
業の想像通りで、Aは小さく頷いた。
A「あの子と私のDNA鑑定を依頼した。それが松方さんに届くようにしてて……そしたらほぼ合致したの」
業「うん」
A「あの子ね、自分がそこの家の子じゃないって知って、人間関係がわかんなくなって不登校になっちゃったんだって」
業「うん」
A「あの子ね、私に言ったの。
私みたいにあの子に似てる人と家族だったら信じられたのかなって」
話すのが苦手な、自分の気持ちを言葉にするのが苦手なAは深呼吸を繰り返す。
業は空いている手でAの腕を摩りながら話す。
A「どうしたらいいのかな」
業「まずは、お母さんたちと話すこと。それから松方さんと何度も相談して、その時にあの子と何度も関わっていけば良いと思うよ、A」
いつもより優しくAを見つめる業の瞳。
Aは業の手を握り返して、業と額を合わせる。
A「いつも、ありがとう」
業「俺の方こそ、いつもありがとう」
二人は目を細めて笑い合うと、ゆっくり瞼を閉じた。
冬に入りかけていても暖かい夕日と、お互いの温もり。
それらを感じながら二人はしばらくの間、誰も立ち寄らなくなった公園で、そのまま過ごしていた。
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作者名：塩こんぶ | 作成日時：2022年12月3日 11時
